内容説明
30歳のケマルは一族の輸入会社の社長を務め、業績は上々だ。美しく気立ての良いスィベルと近々婚約式を挙げる予定で、彼の人生は誰の目にも順風満帆に映った。だが、ケマルはその存在すら忘れかけていた遠縁の娘、十八歳のフュスンと再会してしまう。フュスンの官能的な美しさに抗いがたい磁力を感じケマルは危険な一歩を踏み出すのだった──。トルコの近代化を背景に、愛に忠実に生きた男の数奇な一生を描く長篇小説
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キムチ27
60
イスタンブールを舞台にした壮大❔な人生の悲喜劇★30歳の裕福な主人公が語る(聞かせられる方にとっては 面白くも何ともない くそ話っぽい)筆者が標題へ込めた荘厳なる想い⇒【人生はかくの如く 数奇な出来事が満載だ】という事かな。当初の想い「ノーベル文学」に力が入り がっぷり四つに組んだのが肩透かし。途中で読む気が失せ 困った。そういう低レベルな読者がいる事も承知のパムクと勝手にこちらで決め、下巻へ行く。世界に冠たる歴史を持つトルコ・・ケマルはどう見ても恋愛に疎すぎ 婚約も破棄し、遠縁の美女への溺れる愛をみよう2022/12/14
Shun
40
西欧のモノや文化が流入する近代化を背景に、一族の経営する会社の若き社長ケマルの一生を描く。時代の空気を感じ、発展中のトルコは近代的な物と古式蒼然とした家屋等の伝統的な風景が一緒になって良くも悪くも趣のある時代と見えます。また西欧流の資本主義に倣い資産を築いた者や、伝統に縛られることだけが原因ではないが貧窮する者たちのような二極化も近代と伝統という対比となって見えてくる。そして裕福なケマルは申し分ない女性との婚約式を控える最中、突如再会した遠縁の娘に心を奪われてしまう。その恋は危険で嵐のように。下巻へ続く。2022/08/22
hiroizm
30
10年ぶりの再読。美しく教養ある婚約者がいながら遠縁の18歳の女性との性愛に溺れていくイスタンブール財界御曹司の独白小説。1970年代当時のイスタンブールの世相や、富裕層の優雅な生活の様相を絵巻的に織りまぜなつつ、激しく揺れつつ深き恋に堕ちる心情と苦悶、花が散るかのような儚さを帯びた懊悩の描写がスリリング。やってる行為は二股だしズルズル流されるだけで呆れたが、これほど苦しみ愛されるならまあいいか、と主人公にシンパシー感じる人多いかもとも感じた。中盤の盛大な婚約式の場面は圧巻。絶賛おすすめ 2023/03/03
しゅん
14
よくある二股話で、しかもどこかに必ず落とし穴があるのをわかって読むのは感情的につらい。トルコの近現代史が下敷きになってて、博物館という仕掛けがあるのはわかっててもページを前に進めたくない。しかしながら、描写が多いのにすらすら読める。これは作者の技術だろうか。2023/10/09
北風
12
いやいや、お前はろくでなしだよ。それなりに遊んでいて耐性がありそうだったのに、幸せな結婚をしようってときになって魔が差した? それが本当の愛なのか? 愛というよりも、恋に溺れただけにしか思えず、到底愛には辿り着けそうにない。なにかの犯罪に手を染めてしまったかのような恋愛。ただのストーカーに成り下がる。無垢の博物館? どこが? ただただ、自慰のための道具を収集して、汚れをためていくかのよう。理解できない。誰もが陥る可能性がある、麻薬やギャンブルのようなもの。下巻読むのキツイなあ。2023/05/30