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内容説明
近代の大衆が生み出したイデオロギーが、「全体主義」である。
困難と義務を放棄した“できそこないの個人”が全体主義社会を望むのだ。
20世紀のナチスやソ連、現代では中国などが全体主義国家として挙げられるが、
むしろ日本の症状のほうが深刻だと著者は警鐘を鳴らす。
そもそも「自己欺瞞」によって近代を受け入れた日本は、
全体主義に対峙すべき「保守」が根付かなかった。
そこへ、合理性と効率性を追求するグローバリズムと社会の分断を煽る
新しいテクノロジーが浸透し、人間性の抹殺が日々進んでいる、と。
我々に残された対抗手段はあるのか? ニッポンを蝕む全体主義の正体を暴く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Isamash
28
作家の適菜収2022年出版著作。近代の大衆が全体主義を生んだ。即ち出来損ないの個人が全体主義を望んだと説く。自分も卓越した政治リーダーを望む気持ちは確かにあり、それが広がった時に全体主義が生まれるということか。維新の橋本徹や安倍晋三を保守主義(人間理性や正義を疑うという)の立場から糾弾。私自身も正義は暴走すると思っていて抜本的改革と叫ぶ輩こそ危ない、漸進的修正こそ改革の早道と考えていて、保守主義そのものかも。小室直樹によれば歴史的に、政治に清廉潔白を求める時こそ独裁に繋がりやすく、今は危ない時期とも思える2023/12/24
さきん
28
まずは、オルテガの大衆から。考えることをやめ、安きに大きな流れに身をまかせる人々のムーブメントが全体主義へ。今の日本でいえば、選挙でこれだけ腐敗しているのに自民党以外選択肢ないといれてしまう流れ。かといって第二党は改革の下何から何まで破壊しつくしそうな維新。西欧では、個人の確立を重視するが、日本は東アジアらしく個の確立が弱く(それが悪いというわけではない)、その中でも一人ひとりが武士的姿勢というか、高い見地を身に着けるべく本書で上げられたような先人の著作でも読んでいくしかないのではないかと思う。2022/09/10
スターライト
8
全6章のうち最初の4章は、全体主義が近代化によって生まれ国によってその特性も違うので、その国の分析が必要なことをオークショット、オルテガ、アーレントらの理論も踏まえながら指摘。その上で、内発的に近代化がすすめられた西洋と、鎖国から開国へと移る中で外発的に近代化が進められた日本の違いもふまえながら日本の現状と危険な兆候に警鐘を鳴らす。最後の2章はここまで書いて大丈夫かとの危惧も抱くほどの大ナタぶり。巻末の解説にあるように、現状を打破するためには「自分に多くを求め、進んで困難と義務を負わんとする」必要がある。2022/06/24
Eiki Natori
6
他の著作と内容が似通っている。もちろん著者の本を読んだことのない方にはオススメであり、全体主義とはどのようにして起こるのかというメカニズムを、古典から紐解くことで理解できる一冊。 ウクライナ戦争では、私は全体主義的なものを、左右問わず感じているものがあり、それに異論を持つことを「カルト」「陰謀脳」と切り捨てる風潮にキモさを感じている状況もあり、筆者には異なった切り口で看破してほしいと思っている。2022/05/02
黒頭巾ちゃん
5
▼大衆とは自由になり、彷徨い、周りと同質化を求め安心する。自分で決めることは負担になる。自発的ではない▼大衆は同質化する指示を政府に求める▼星は人間理性を違う人間は完全な存在ではなく間違うから正義を警戒▼国家は国民を束ねるために接合材として神話や民族物語を利用する。ナショナリズムは民族一旦バラバラにして神話で結合させる▼大衆は情緒に流される。事実ではなくわかりやすい世界観を示してくれる人▼為政者は真実を隠すために言葉を変える2023/03/26