内容説明
自分の部屋に見ず知らずの死体を発見した男が、死体を消そうとして逆に死体に追いつめられてゆく『無関係な死』、試合中のボクサーの意識の流れを、映画的手法で作品化した『時の崖』、ほかに『誘惑者』『使者』『透視図法』『なわ』『人魚伝』など。常に前衛的主題と取り組み、未知の小説世界を構築せんとする著者が、長編「砂の女」「他人の顔」と並行して書き上げた野心作10編を収録する。(解説・清水徹)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
273
10篇の内、一見して荒唐無稽な設定をとっているのは「人魚伝」くらいのもの。後の作品は、日常から逸脱しながらも、それを大きく踏み越える世界を描いているわけではない。しかし、例えば「無関係な死」に見られるように、最初のほんのちょっとしたボタンの掛け違えから、しだいに異和が拡がってゆき、やがてはズルズルと奈落に引き込まれていく―まさに安倍公房の小説世界だ。個々の読者にとっても、それは「ありえない現実」ではなくて、「ありえたかもしれない現実」。不条理は突然に現出するのではなく、私たち自らの内にこそあったのだろう。2015/01/11
遥かなる想い
116
短編集。初期のものらしく、後の作品への展開が予想される、不条理な題材が多い。ある日、身に覚えの無い死体が突然アパートの自室に現れる等の 設定はカフカの影響かなのだろうか… 2010/06/20
keroppi
79
「芸術新潮」の安部公房特集を読んだら、安部公房を読みたくなった。「いま読みたい」として挙げられていた「人魚伝」が目当てで読む。昔読んだことがあるようにも思うが、すっかり忘れているので、とても楽しめた。人魚の描写も凄いが、自分の分身が生まれ人魚に食べられ複製し自分を殺し自分を殺人犯として逮捕させ自分の存在が消えてしまうという、自己存在の危うさや、精神的迷宮が見事に描かれていて、やはり安部公房は好きだなぁと思ってしまう。この話、石ノ森章太郎が漫画化しているらしく、これも読みたくなってくる。他の収録作品もいい。2024/03/23
Vakira
56
アドレナリンの分泌の有無は、恋と、愛とを区別する重要なポイントなのだ。そして僕は緑色過敏症に罹ってしまう。それは難破船の確認作業中に出会った緑色の人魚の所為。コボさん版異類婚姻譚。出だしの文章はハッとするほどカッコイイ。小説とはなんぞや?哲学的な考察から入ります。勿論その文章は純文学してます。純文学とSFの融合。My壺で堪りません。コボさんの「人魚伝」目当てに読みましたが、他の短編もいいです。クセが強い登場人物。抵抗しながら翻弄される主人公。追う者は逃げる者、やがて逃げる者は追う者に・・・出たこのパターン2022/11/25
優希
53
面白かったです。野心作ばかりがおさめられていた短編週でした。前衛的主題で独立している作風に魅せられます。独特の空気感がたまりません。2021/10/25
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