内容説明
1945年8月6日、広島に原子爆弾が炸裂した。市橋靖子は崩れた長屋の下敷きになった夫を残し、幼い娘をつれてなんとか逃げのびる。身を寄せた実家のそばで駄菓子屋を始めて生計を立てるが、やがてマーケットにお好み焼の店を開店し、一人で切り盛りするようになる。あの日から立ち上がり、復興していく人々の生活と心情を、戦後の歴史を追いながら、三代にわたる女性を主人公に描く傑作長編の第1巻。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
カープ坊や
16
2013年マイベスト本 那須正幹のヒロシマ3部作。 文庫にあたり購入して再読です。 原爆の爪痕残る広島市、駄菓子屋からお好み焼きをはじめた母靖子と幼子の和子。 はだしのげんのような生々しさはないが 原爆の惨劇そして復興してゆく広島を舞台に家族愛あふれる感動の一冊。2015/06/15
にたいも
9
なんとも切ない読後感。/広島の原爆で夫を亡くした靖子は、一人娘を抱え、己斐町の実家で駄菓子屋を営んでいる。流行歌、社会情勢を織り交ぜながら、1949年夏から1951年末、焼け野原に次々に家が建ち店が開かれる広島の復興の中で、〈思い出してはならない〉ことを抱えながらささやかな日々を暮らしていく女性を描く。/豪州兵と対比して「米兵たちは、ピカを落とした負い目があるから広島市民に好意的」と近所の元海軍少尉のインテリの話として出てくる。他の人もそう思っていたのかな。実際はどうだったのだろう。調べてみたい。2023/09/25
mareureu
6
戦後まもなくの広島。原爆で夫の茂次を失った市橋靖子は、己斐の実家で母マサと小さな駄菓子屋を営みながら、幼い娘の和子を育てています。原爆のもたらした惨禍にくじけず生き抜く健気な広島の女性の物語。とはいえ話の眼目はむしろ、戦後復興のめまぐるしさに沸く広島で生きる庶民たちの姿を活写することのほうにあるようです。原爆という大きなできごとを扱っているため一見手に取りずらい印象がありますが、平易な文体で書かれているため、昭和文学よりはライトノベルや新文芸に親しんできたわたしでも読みやすかったです。2017/03/09
ごいんきょ
4
まだ私が生まれていない頃の広島。 広島弁がダイレクトに伝わってきます。 中高の6年間通った途中駅の己斐。ここが物語の舞台。 太田川放水路も完成していない頃はこんなだったですね〜。 続きが楽しみです。2016/06/13
ぽん
4
たくさんの歩き出した人々が一生懸命生きてくれたから今があるんだろう。知っている土地名に今の様子が浮かび、少し知らなかった事実もあったり、と、読めて良かったです。読書メーターをやってなかったら気づけなかった物語でした。さて、次巻。2015/07/26




