内容説明
日本仏教界最大のタブーに迫る!
「一殺多生」による正当化、軍用機の献納、仏像や梵鐘の供出、植民地での布教。昭和の戦争を推進した仏教界の語られざる真実。
目次
はじめに
廃仏毀釈からのサバイバル──明治維新
・国家にすり寄った仏教界
・島地黙雷と大教院
進撃する仏教──日清・日露戦争
・日清戦争と大陸布教
・日露戦争──仏教の帝国主義化
・植民地支配と仏教
大東亜戦争と皇道仏教
・戦争に熱狂する仏教界
・戦闘機の献納競争
・軍人たちの仏教信仰
・寺院に残る戦争の記憶
・アメとムチの仏教統制
仏像も鐘も武器と化した
・金属供出と空襲
・反戦の僧侶
・農地改革と寺の“敗戦”
・僧侶たちの戦争体験
結びにかえて
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
73
仏教も教団である以上は権力との関係を避けて通る事はできない。それは仏陀在世当時のサンガの時代から、中国の廃仏や日本だと比叡山関係等数多の例に事欠かない。本書は明治維新以来日本仏教界がどのように政府の政策に協力してきたかを紐解いた一冊。植民地への布教や戦時教学とかの仏教側の問題点も多いが、本書に示されているように根底にあるのは廃仏毀釈のトラウマかな。一度本当に潰されかけたし。釣鐘とかの供出はよく耳にしたけど、仏像の疎開や宗派関係の名を冠した戦闘機の供出は初めて知る。色々教えられることの多い一冊でした。2022/09/17
ネギっ子gen
53
【無差別の殺戮を伴う戦争に、仏教教団は直接的・間接的に関わった。殺生戒めるはずの仏教がなぜ?】「良いお寺研究会」を設立した、大学教員&住職&ジャーナリストが、仏教界が各教団の生存をかけて、いかに国家にすり寄り、植民地政策や戦争に加担し、自らを正当化していったのかを、具体事例とともに分かりやすく紐解く書。巻末に参考資料。<大東亜戦争とは、「大東亜共栄圏の建設」を目的とした、日本側による一方的な呼称である。積極的に戦争に加担した日本仏教責任を明らかにする上で、あえて「大東亜戦争」と「仏教」を結びつけた>と。⇒2025/03/08
Cinejazz
27
殺生を戒める<仏教>が、無差別の殺戮を伴う戦争に直接的・間接的に関わったのか? 仏教教団のトップが戦争を煽る発言や戦勝を願う祈祷を繰り返し、植民地では次々と寺院が建立された時代を俯瞰し、いまも残る戦争の傷跡と仏教界最大のタブ-に触れた歴史ドキュメント。 明治の「廃仏稀釈」の壊滅的打撃からの仏教界の存続を懸け、昭和初期の「皇道仏教」という天皇に対する忠孝思想〝天皇は阿弥陀仏である〟と曲解し、国家の手先となって戦争加担した事実を認め謝罪したこと、反戦を貫いた僧侶のことなど、詳細な記録のノンフィクション。2023/01/09
おおかみ
16
世の中のあらゆる人々が戦時体制に組み込まれていく中、宗教界も例外ではなかった。不殺生の戒めを持つ仏教までもが戦争に協力した。皇道仏教なる教義のもと、「天皇は阿弥陀仏である」と説かれ、梵鐘に仏具、さらには仏像までが供出され武器となった。近年になって、いくつかの仏教教団が戦時下の過ちを検証し、公表するようになっている。宗教が国家と結び付くことの危険性は世界を見渡しても一目瞭然。だからこそ真摯な検証が必要だが、とある宗教と根深い関係にある政治家たちの存在を思うと、80年前の過去の話だとは思えず背筋が凍る。2025/07/22
Aby
10
明治以降,国家神道との力関係もあろうか,不殺生のはずの仏教教団が戦争協力に没入していく.しかも積極的に.◆植木等さんのお父さんの反戦と「スーダラ節」のエピソードは,大昔,NHK-FMの番組に出演された時に伺ったな.2023/05/17