内容説明
陰謀論やフェイクニュースを信じ、党派的な議論や認知バイアスに陥って、結論を誤る原因とは?
21世紀に入り、人類はこれまでにない知的な高みへと到達した。
わずか1年足らずで新型コロナウイルスのワクチンを開発できたことも、その成果のひとつだ。
その一方で、フェイクニュースや陰謀論の蔓延、党派的な議論の横行を多くの人が嘆くようになっている。
人間はこんなに賢いのにもかかわらず、なぜこんなに愚かなのか?
じつは、人の非合理性には、ある種の理由やパターンがある。
フェイクニュースや陰謀論、党派的な議論、将来への蓄えをしないこと、
国同士が凄惨な消耗戦に陥ることには、理由がある。
損を取り返そうと無茶な賭けをしたり、わずかな損のリスクを過大評価して
有利な取引を辞退したりするのには、パターンがある。
理由やパターンがあるなら、これらの非合理には、対策や介入が可能なはずだ。
理性の力で間違いを減らし、人生と世界を豊かにするには、どうすればよいか?
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
149
ピンカーは大好きで、本書も大いに勉強になった。日常で見落としがちな陥穽がそこかしこにある。確率や論理など、人類の蓄積を駆使して直観の罠を回避しようという話。問題は論理や確率は使い方が難しく、前提を見落として安易な計算をすると一般人の直感に簡単に負けてしまう。確率論や論理学などの話題は理系には易しすぎ、文系にはやや難しい話題だと思うがその気になればついて行ける。理性と直感は時に相反する答えを出すがちゃんと理由がある。むやみに一方を否定すべきではない。2023/06/01
ばたやん@かみがた
103
《合理性に支えられた私達とそれを有効活用する手法》(1)「リンダは、幼少からクラスで積極的に発言する人物で、大学では反核運動に熱心に参加していた。では現在彼女は次のうちどちらである確率が高いか?(a)銀行員(b)フェミニズム運動に取り組む銀行員」。こういう質問をすると、回答者の政治的立場・思想傾向とは無関係に「(b)」と答える人が圧倒的とのこと。でも冷静に考えれば、例えば集合のベン図とか書いて見れば、間違いであることは分かりますよね。「(a)⊇(b)」ですから、(a)である確率の方が当然高い。 (1/5)2023/05/07
harass
66
以前から名前だけは知っていた認知心理学者の科学読物。大量の例をあげて、人が判断を間違うことの原因を論じる。モンティ・ホール問題や行動経済学や統計、確率。ベイズ推定など。興味のある分野でもあるせいか予想外にすらすら読めた。この学者の翻訳本はまったく手をつけてなかったが面白いものを書く人なのだとようやく気がつく。トランプ大統領選挙など執筆時の話題などもあり、同時に読んでいる「ファンタジーランド」と被る箇所などほくそ笑んでしまう。やや難しい箇所もあるのは確かだがおすすめ。下巻に。2023/01/08
たま
57
トランプ政権と新型コロナの数年間、SNSで不思議な言説を見聞きすることが多かった。どうしてこうなるのかと読み始めた本。著者自身序文で〈ヒラリー…の児童買春組織〉が執筆の動機となったと述べている。この巻ではまず、論理、統計、確率などを扱ううえで陥りやすい過ちを検討している。中で最も時事的なのは利用可能性バイアスとジャーナリズムに触れた第4章だろう。日本でもコロナ関係の報道はレアケースに傾き、バランスを見失っている印象が強かった。著者の言う通り「確率という分数の分子だけでなく、分母も同時に伝えるべき」と思う。2022/11/03
きゃれら
29
ピンカーさんの著書は初めてで、「暴力の人類史」などの硬派なタイトルの他の本を知っていたので、難しくて読むのに時間がかかる可能性が高い、と事前に(笑)と思っていたら、面白くて丁寧に読みたくなって時間がかかった。現代人必読の好著と思います。私達の理性が、メディアやWEBによる情報の氾濫でいかに騙されるかについて優しく語ってくれている。この上巻は、ベイズ推論は現代を生きる人々が必ず身につけるべきスキルであることを熱く語ろうとしていて、成功しているのではないか。その意見に自分は全面的に賛成。2022/12/07