内容説明
中村藩(現・福島県)最後の藩主・相馬誠胤の奇矯なふるまいをめぐり、家令らが座敷監禁そして入院を処断したことに旧藩士・錦織剛清が、家督相続を狙った不当監禁として告訴し、以後患者本人の死後までも十二年にわたり争われた「相馬事件」。告発のみならず入院先から旧藩主を連れ去り、本人死後は毒殺であると告発するなどの行動により「忠臣」とも言われた錦織、近代的な精神医療のとば口で診断や患者の処遇に迷う医療者、法整備を迫られ、事件後の1900年、精神病者監護法を制定する明治政府。近代日本の精神科医療の画期となった相馬事件を膨大な資料を基に再構築し、考察する。