これからの時代を生き抜くための 文化人類学入門

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これからの時代を生き抜くための 文化人類学入門

  • 著者名:奥野克巳
  • 価格 ¥1,760(本体¥1,600)
  • 辰巳出版ebooks(2022/06発売)
  • ポイント 16pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784777828739

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内容説明

「人新世」というかつてない時代を生きるには、《文化人類学》という羅針盤が必要だ。

ボルネオ島の狩猟採集民「プナン」と行動をともにしてきた人類学者による、“あたりまえ”を今一度考え直す文化人類学講義、開講!!

【内容】
本書は、ボルネオ島の狩猟採集民「プナン」との日々を描いたエッセイ『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』が話題となった人類学者・奥野克巳による、私たちの社会の“あたりまえ”を考え直す文化人類学の入門書になります。
シェアリング、多様性、ジェンダー、LGBTQ、マルチスピーシーズ…といったホットワードを文化人類学の視点で取り上げ、《人新世》と呼ばれる現代を生き抜くためのヒントを、文化人類を通して学んでいく一冊です。

【構成】
◆第1章 文化人類学とは何か
地球規模の時間で人類を考える/「世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう」/ここではないどこかへ――外の世界を知り、己を知るための学問/異文化への関心と旅の時代――文化人類学はいかにして誕生したのか/現地調査と系図法の発明/人類学者マリノフスキとインディ・ジョーンズの知られざる出会い/フィールドワークによって描かれた『西太平洋の遠洋航海者』/藪の中のシェイクスピア/「自分に近いものはよく見えるが、遠く離れたものはよく見えない」/結婚と離婚を繰り返すプナン/多種多様な家族のあり方/近親相姦の禁止が「家族」と「社会」を作った!?/人間生活の現実を描く/人間の生そのものと会話する

◆第2章 性とは何か
自然としての性、文化としての性/さまざまな生き物たちの多様な性/正直者とこそこそする者の生存戦略/子殺しをするラングール/ボノボの全方位セックスは「子殺し」回避のため?/霊長類における発情徴候の有無/なぜ、ヒトには発情徴候はないのか?/生物進化の産物としてのホモセクシュアル/精液を体内に注入し男になるサンビア社会/複数の父親がいるベネズエラのバリ社会/セックスでは子どもはできないと考える人々/「性肯定社会」と「性否定社会」/「性の楽園」ミクロネシア/性を忌避するグシイ社会/女性の性器変工の是非/男性の性器変工に見る民主的快楽/死者と交わる儀礼的セックス/五つもジェンダーがあるブギス社会/近未来のセックス――宇宙でセックスすることは可能か?

◆第3章 経済と共同体
贈与と交換から人間の生き方を考える/狩猟採集民プナンの暮らしから/ランプの下で神話を聞く/歩く小屋の神話の謎/富を生み出すフンコロガシの神話/惜しみなく与えるマレーグマの神話/プナンの気前のよさはどこから来るのか/気前のよさと所有欲との葛藤/「ありがとう」という言葉を持たないプナンの人たち/プナンは平等であることに執拗にこだわる/喜びや悲しみもみんなで分かち合う/所有することの是非/気前のよいビッグマンがプナンのリーダー/ものを常に循環させる「贈与」/キエリテンの神話が語るリーダーの資質/糞便の美学/「ない」ことをめぐって/「贈与の霊」の精神が生み出すプナン流アナキズム/循環型社会の未来を考えてみよう

◆第4章 宗教とは何か
人間が人間であるために欠かせない「宗教」/なぜ卒業式をしなければいけないのか/挨拶という儀礼的行為/時間はどのように経験されるのか/時間は本来、区切りのない連続体だった/儀礼によって私たちは人生を生きる/時間の感覚に乏しいプナン/文化人類学の理論「通過儀礼」/東ウガンダの農耕民ギスの苛酷な成人儀礼/ボルネオ島先住民ブラワンは二度死体処理をする/バリ島民は海で泳がない/人間が人間であるためには/無礼講のコミュニタスが日常を活性化する/ヨーロッパ人の関心を掻き立てたシャーマニズム/脱魂と憑霊のシャーマニズム/世界各地に存在するシャーマニズム/シャーマニズムの弾圧と再評価/現代の都市住民のためのネオシャーマニズム/自閉症の少年を癒すシャーマニズム/二つの世界が往還するアニミズムの世界観/人とカムイと熊が一体となるアイヌのアニミズム/知られざる呪術の世界を分類してみる/邪術師は誰だ!?――邪術告発の事件/妖術は不幸を説明する/現代にも息づく呪術の世界/別の仕方で世界に気づく術

ほか

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

trazom

112
社会を形成する諸原理(家族、性、民主主義など)に揺らぎが生じつつある現代において、文化人類学という学問は大変重要だと思う。本書では、ボルネオ島での著者の研究を踏まえて、性/経済(贈与、交換)と共同体/宗教(儀礼、呪術)/自然(人間、文化と自然)の各テーマについて、文化人類学的な考察が紹介される。現地の人々の考えや行動を、フィールドワークという手法によって虚心坦懐に理解しようとする姿勢を通じて、西洋的な文明進化論、自文化中心主義、人間中心主義という現代のパラダイムに対する根本的な問いが生まれる気がする。2022/11/10

樋口佳之

57
プナンの人たちの神話が、「文化」から「自然」が生まれたと考えたように、多くの先住民社会では、しばしば人間以外の諸存在も、人間性を有していたと見ている…それは、複数種によってこの世界は作られ、営まれていることに、これまで人類学が出会ってきた先住民の人々は気づいていたということ…「存在論的転回」を経た人類学は、改めてそのことに立ち返ろうとしています。/とても視野の広い議論でかつ論旨明快。これから何を学ぼうかと選択に入っている世代にお勧めだし(または危険)、数十年前に読みたかったかも。/ご紹介に感謝でした。2022/09/21

to boy

22
文化人類学というとアマゾンなど未開の部族を調査して、こんな風習があるといった上から目線のものだと思っていたらとんでもない間違い。他の民族の中に入りその文化を学ぶことで自らの文化の意味を見直すきっかけになり、先進国とか未開という概念を無くし人類とは何者かを探るものだと分かった。さらに最近では人新世という概念から人類だけでなく他の動植物、自然を含めた大きな概念を想定しその中の一つである人類という考え方が出始めているとのこと。文化人類学の奥深さをちょっと覗いた気分でした。2023/12/28

ta_chanko

21
世界各地の狩猟採集民の生活を見ると、人間の多様性に驚かされる。自分たちの現代的?な生活が普通で先進的だと思ってしまいがちだが、長い人類史の中でみれば数多の文化の一つに過ぎない。近年、現代世界でもLGBTの権利が認められるようになってきたが、狩猟採集民の性の多様性は想像を超えていた。また近現代は「所有」という概念から資本主義経済を発展させてきたわけだが、「所有」しないことが名誉である社会も存在する。人間が自然を支配・利用するのではなく、文字通り自然と共生する生き方もある。視野狭窄に陥らないための名著。2022/09/06

テツ

18
あたりまえのことだけれど、文化が異なればベースとなる道徳観や価値観も大きく異なる。自分たちが慣れ親しんでいるそれらとは大きくズレたものをベースに生きている人々を目にしたときには優越感や蔑み、敵意すら抱きがちだけれど、これも当然のことながら「違う」というだけで、上下関係にはない。そうした差別意識がゼロになることなんてありえないのだけれど、世界を広く眺めることによって民族間だけではなく、個人間の「違い」にもおおらかになり、良い意味で「違い」を放ったまま共存できるメンタルを養える気がします。2023/03/08

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