筑摩選書<br> 女教師たちの世界一周 ――小公女セーラからブラック・フェミニズムまで

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筑摩選書
女教師たちの世界一周 ――小公女セーラからブラック・フェミニズムまで

  • 著者名:堀内真由美【著者】
  • 価格 ¥1,595(本体¥1,450)
  • 筑摩書房(2022/06発売)
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  • ISBN:9784480017406

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内容説明

『小公女』に登場するミンチン先生といえば、意地悪で醜い独身女。女教師に対してこんな冷たい眼差しが注がれていた19世紀イギリスで、男子校に引けを取らない教育を行う、教師養成のための女子校が誕生した。女教師は女教師を育て、やがて活躍の場を求めてイギリス本国を飛び出していく。インドやカナダ、アフリカ、そして西インド諸島――。大英帝国にイギリス式女子教育を広める冒険の旅は、各地に何を残したのか。その旅路の果てに、知られざる「ブラック女教師」の物語が立ち現れる。

目次

はじめに
第一章 ミドルクラス女子の生きる道──『ジェイン・エア』と『小公女』
1 『ジェイン・エア』──女教師とガヴァネス、どちらがましか
『ジェイン・エア』の時代背景
働きたいのに働けない女性たち
ブロンテ姉妹の「女教師」への道と挫折
寄宿学校でのサバイバル
寄宿学校女教師からガヴァネスへ
2 『小公女』──ミンチン女学院校長の苦悩
作者バーネットが描いたイギリスの女学校
セーラがはるばる「本国」にやってきた理由
ルソーの女子教育論
ウルストンクラフト発、女子教育改革
水準の高いガヴァネス養成学校の開校
取り残されたミンチン校長の苦悩
第二章 帝国の女教師──直轄植民地インドと自治領カナダ
1 インド──「文明化の使命」の行使先
男子並み教育の「その先」を求めて
アネット・アクロイドの充たされない日々
植民地インドにおける社会改革
「文明化の使命」をみずからに課す
ミイラ取りがミイラになるプロセス
未完に終わった「帝国の妹たち」への教育
2 白人定住地域へ──女校長協会の活躍
白人定住地域への進出
女校長たちの権力掌握と次なる野望
サラ・バーストールの歩み
ケンブリッジウーマン・ネットワークの形成
ネットワーク枠外の女教師たち
階級制度維持装置としてのイギリス型女子中等教育
3 カナダ──イギリス型女子教育から見た『赤毛のアン』
プリンス・エドワード島へ
作者モンゴメリの希望を託されて
カナダ生まれの女教師アンの教職経験
本国女教師撤退の土壌
カナダからの手紙
アンへのまなざし
第三章 バッシング──戦後の混乱のはけ口
1 反動のはじまり──女子中等教育の完成期
女教師とサフラジェット
反動への序章
女校長たちのフェミニズム闘争
「闘う女教師たち」のステイタス
高まるワーキングクラス女性の不満と抗議
最後の承認
2 敵視される女教師たち──ドロシー・セイヤーズ『学寮祭の夜』
巧妙な批判
フェミニズム(女性運動)の大転換
「独身女性はレズビアン」
学問となった「性科学」
舞台はオクスフォード大学女子学寮
独身・超高学歴女性が既婚女性を部下にしたとき
既婚女性の長い独白
嫌悪と批判の中から取り出された真実
次なる、そして最後の実践地
第四章 新天地を求めて──アフリカ、西インド植民地のイギリス型女子教育
1 アフリカ支配地域──女校長協会の植民地進出
女校長バーストール、植民地省直属機関に加入する
アフリカ研究と教育との関わり
女教師vs女性宣教師
植民地政策vsエリート女教師の「理想のアフリカ女子教育」
現地からの重大情報
イギリス型女子中等教育の断念
2 ジャマイカ──肌の色と女子教育
自治権要求運動の激化
「肌の色のグラデーション」に対応する女子教育
いとこ同士の間の差異
肌の色のグラデーションと植民地階層社会に支配される人々
女子寄宿学校というステイタス
バナナの林をガウン姿で闊歩する女教師たちへの憧れ
イギリス型女子教育による排除への認識
教職という選択
ブラック女性としての人生
3 ドミニカ──ジーン・リースから見た本国の女子教育
植民地生まれの英系白人(クリオール)少女の体験
もう一人のセーラ
クリオール女性の多難な人生
堕ちたケンブリッジ・ウーマン
幽閉された妻を描いた『広い藻の海』
本国への復讐
第五章 「ブラック女教師」の誕生──植民地教育を受けた子どもたちの来英
1 ウィンドラッシュ世代──「必要とされてやってきた人々」の苦闘
二〇一八年ウィンドラッシュ号来港七〇周年
リースの描いた西インド移民女性の日常
ノッティンガム・ノッティンヒル事件
移民法と、急いで家族と合流する人々
ウィンドラッシュの娘たちの運動史
「ブラックの歴史」に行き着くまで
2 ベヴァリー・ブライアン──知られざる「ブラック女教師」の物語
移民と帰国者というダブルの経験
ジャマイカの子ども時代とイギリスへの編入学
編入学直後の二重の困難
ブラック少女の中等学校進学
女教師たちからの支援
ブラック・コンシャスの時代
女教師への道
ブラック女教師、コミュニティで採用される
ブライアン先生の教室と「カリキュラムの脱植民地化」
OWAADのフェミニズム
次世代のためのSUS法撤廃運動
ジャマイカでの新たな挑戦
小公女セーラからブラック・フェミニズムまで
おわりに──ダイアナ・レオナード(Diana Leonard)のこと
年表
引用・参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

シルク

11
わたくしには、どーにも、この人の書く文章は読みにくかった。。。テーマは、『小公女』のミンチン先生だの、『赤毛のアン』のアンだの、とても心惹かれるものなのだけど。なんだろうなぁ、うーむ、1文のなかに、あるいは1パラグラフのなかに、いくつもいくつも主張を込めすぎ。かと思うと、他のパラグラフはスカスカ(に思える)。あと、そもそも何を明らかにしようとしてるんでしょう? って、問題が、ハッキリ提示されていないように思える。。。少なくともわたくしには、読み取り辛く感じられた。注がついていないのも、残念に思った。2022/06/24

deerglove

5
いやあ、公立中学校教諭から留学を経て大学教授になった著者自身の経歴と重なるような話で大変面白かったです。女性の地位向上だの活躍促進だのの話は150年も前からイギリスの植民地支配を背景にしたエリート女教師によって「世界的に」広がっていたのですね。しかも戦争や経済不況の影響もあって決して一筋縄では進まない難しさは今に生きるわれわれにも多くの学びがあるように思います。2022/12/20

古本虫がさまよう

5
英国などの文学作品などで描かれた「女教師」の世界を参照しつつ、彼女たちが植民地での教育活動をどのようにしていたかなどを考察している。『小公女』は読んだことがないけど、『赤毛のアン』は高校時代には愛読していたので(?)、カナダでの「イギリス型女子教育から見た『赤毛のアン』」には関心があったので、その項目のところは熟読した。フェミニズム学派が「赤毛のアン」をどう評価するのか、しないのかはちょっと関心があったので手にした次第。 2022/05/03

kirin100

1
イギリスの歴史の中で小公女セーラと赤毛のアンがつながるとは思わなかった。基礎知識がないので難しい箇所もあったけれど、著者の語りに優しく誘われ、読み終えることができた。 大きな森の小さな家シリーズのローラも、母さんのキャロラインも、教師だったことを思い出す。2023/06/11

かどの炭

1
イギリス帝国のミドルクラス女子教育から、カナダ、インド、オーストラリアという植民地での女子教育と女教師、さらにカリブ諸国の女教師たちを取り上げた興味深い本。教育とブラックフェミニズムという繋がりも非常に面白かった!2023/01/26

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