内容説明
「若年性レビー小体型認知症」本人による、世界初となる自己観察と思索の記録。認知症、脳の病気とは一体何なのかを根本から問い、人間とは何か、生きるとはどういうことかを考えさせる。周りに理解されないための孤独と絶望の中にありながら、幻覚(幻視、幻聴など)、嗅覚障害、自律神経症状など自分に起きたことを日記形式で淡々と観察し、卓越した文章力で表現した希望の書。
目次
はじめに
2012年秋 発症
2012年冬 真偽
2013年春 根拠なき信念
2013年夏 社会的孤立
2013年秋 子ども達に伝える
2013年冬 進行の恐怖
2014年春 小さくなる怪物
2014年夏 理不尽な医療
2014年秋 開かれていく心
2014年冬 堂々と
巻末付録 レビーフォーラム講演録「本人になってみて初めて分かったこと」
文庫版あとがき
解説 病と一緒に自分を生きる 伊藤亜紗
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
88
2012年の秋から2014年冬までの「レビー小体型認知症」当事者の記録。突然、目の前を虫が飛び、卑しい顔でせせら笑う。この虫は私に取り憑いた「疫病神だ」と著者はいう。何もない所に本物のように見える虫が現れる幻視をはじめ、幻聴、幻臭、幻味、体感幻覚など、脳が勝手に「誤作動」を起こす。一文挙げておく。「ガンダム(ロボット)の内部で操縦している自分(の思考力や感情)は、まったく変わらないのに、ロボットの性能が低下していて、時々思いもかけない誤作動を起こすと感じる。→2022/07/18
yumiha
51
50歳でレビー小体型認知症(以下レビーと略す)と診断された著者。つまり医療従事者や介護者ではなく、患者本人が綴った日記という貴重な本書。身近なレビー患者の症状や心の動きと比べさせてもらいながら読んだ。さて著者は、レビーという診断以前の10年間ほどは、うつ病と誤診されたために不適切な治療(主に薬)に身体的にも精神的にも苦しまれたのが痛ましい。たぶん私を含めて、認知症患者=老人という思い込みが多いのと、当時はレビーについてあまり知られていなかったために誤診に至ったのだろうと推測する。レビー診断後も苦悩は続く。2022/07/08
かいちゃん
34
レビーばっかりの病棟にいたこともあります。 確かにレビーはアルツハイマーやFTDとは違うと思います。 患者本人の文章、というところが有意義でした。2024/07/02
KEI
32
著者のインタビューを聴いて、レビー小体型認知症とは思えなかったので手にした本。著者の日記が掲載されている。この病気には認知症とついているが、決して認知症と一括りにしてはいけないと学んだ。著者は言う。レビー小体症だと。全身にレビー小体が付着する病で、認知症と絶望してはいけない。本書を読んで、大部分は誤診による副作用の辛さだった。この病気には薬物過敏があり、しっかり診断されて、薬物のコントールが出来た後は、幻視はあるものの思考力も落ちずにいる。この病の姿を発信しようとする姿は多くの関係者の励ましになるだろう。2023/02/14
パフちゃん@かのん変更
25
認知症というとアルツハイマー型をすぐ思い浮かべてしまう。いわゆるぼけ老人。でもこの方の認知症はそうではなくて、幻視・幻聴が主な症状。文章も知的だし顔写真も知的に見える。物忘れや人の名前が出てこないなど、私だってそうだ。臭覚の低下は認知症の前触れらしい。2023/03/14