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内容説明
幼くして父親と母親を亡くした少年フィリップ。寄宿学校での経験から自由を求め、外国生活に憧れてハイデルベルクの下宿屋へ、芸術家になることを夢見てパリの美術学校へ、就職するべくロンドンの医科大学へと、理想と現実の狭間をもがき進む。そのなかでの様々な出会いに翻弄され……。友情と恋愛、そして人生のままならなさと尊さの両面を描き切る文豪モームの自伝的長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
78
「幼い時分に両親を失い、叔父に育てられた作者自身の自伝的な教養小説」。さすがのモーム。読ませる。中野好夫訳「人間の絆」として2度は読んだ。久しぶりに手にしたが、とっても新鮮。初めて読んでる気がする。我輩の記憶力の悪さ……じゃなく、訳者である河合氏の巧みな訳のお陰と思いたい。感想はいいよね。2022/08/24
みつ
24
『人間の絆』として知られるモームの大長篇。原題は『OF HUMAN BONDAGE』とのことで、現在の語感からは、なるほど「しがらみ」とした方が誤解は少なそう。九歳で母と死に別れ牧師館の伯父のもとに引き取られたフィリップは、長じてハイデルベルクに留学し10歳以上年上(p271の記述から)のミス・ウィルキンソンと恋仲に。ロンドンに戻った後画家を志望してパリへ。ファニーとの交際と破綻。夢破れロンドンへ再度戻り医学を学びつつ今度はミルドレッドに熱を上げる。三様の恋愛模様が皮肉の効いた冷静な筆致で描かれていく。2024/05/12
pika
6
とてつもなく面白い。半自伝的小説とは、と念頭に置いて読んで納得。その時々に感じた気持ちを冷静に分析していたからこその丁寧な筆致。フィリップはモームであり、自己分析しながら青春を生き抜いてきたんだと噛み締める。全てをさらけ出す姿勢が素晴らしく、面白い。夢に破れる展開や軽蔑しつつも惚れてしまい自己嫌悪に陥る部分は秀逸。何本ラインを引いたか。徹底した観察眼ゆえの哲学。共感しながら、分析された説明に気付かされることがたくさんあった。軽妙で流暢でするすると読んでしまえる。いつの間にやらページが進んでいるという感覚。2023/05/13
まし
5
百年も前の話なので風俗習慣は異なるけど人間の本音が克明に描かれているので、新鮮に臨場感をもって伝わってくる。 技術が進歩して便利になっても人間の本質なんてそんなに変わってないことがよくわかるね。2023/05/11
八百蔵
4
自意識過剰で、社会的地位がマズマズの若い者が迷い続ける話。結構我儘に生きていて、この巻の最後では、しっぺ返しを受けることになる。でも若い頃はこんなもんなような気もする。むしろ、選択肢に余裕があるのが、今の日本と比べると相当恵まれているような感じ。下巻につづく。2023/07/15