内容説明
デジタル経済の急速な進化に伴い、知財の保護と利用の自由のバランスを根本的に見直す必要性が叫ばれるなか、学際的研究のニーズが高まっている。知財法学者はもとより、法哲学者、憲法学者、情報法学者、民法学者、政治学者、文化人類学者、経済学者、実務家らが一堂に集い、知財制度の根幹に迫る。
目次
はしがき[田村善之]
第1編 知的財産と法哲学
第1章 蜘蛛の糸──『知財の哲学』『知財の理論』からみた『知財の正義』[田村善之]
I 序
II 知的財産権の保護は正義の要請か
III 政策形成過程のバイアスへの関心の程度
IV 知的「財産」とは何か
V 結語
第2章 知的財産法制の再考──職業的知的創作の自由の観点から[浅野有紀]
I はじめに
II マージェスの知的財産権理論
III ウォルドロンの権利論批判
IV 知的財産権の代替案
第3章 知的財産制度の正当化根拠をめぐる権利論と功利主義の相克──知的財産と法哲学の交錯の一断面[山根崇邦]
I はじめに
II リベラルな権利論に基づく知的財産制度の擁護──マージェス『知財の正義』(2011)
III 実証的功利主義に基づく現行制度への懐疑──レムリー「信念に基づく知的財産」(2015)
IV 基盤の多元主義に基づく実証原理主義批判──マージェス「功利主義原理主義への反論」(2016)
V おわりに
第4章 所有権の神話──知的財産権の過去と未来?[大屋雄裕]
I 知的財産権の正当化という問題
II 理論的な状況
III 財産からリベラリズムへ
IV 情報という財
V 未来?
第2編 知的財産と憲法
第5章 知的財産権の憲法化の背景と意義[比良友佳理]
I 知的財産権の憲法化とは
II 知的財産権の憲法化の背景
III 知的財産権の憲法化の歩み
IV 知的財産権の憲法化の意義
V おわりに
第6章 拡大する商標保護と表現の自由の保障──米国における商標法と修正1条の議論からの示唆[平澤卓人]
I はじめに
II 米国での議論状況
III 日本法における表現の自由との調整
IV 結語
第7章 著作者の権利に基づく差止めと表現の自由[大日方信春]
I はじめに──いくつかの事例から
II 憲法理論の欠如
III 著作財産権との関係
IV 著作者人格権との関係
V おわりに
第3編 知的財産とアーキテクチャ
第8章 アーキテクチャによる法の私物化と著作権制度──ドイツ法との比較法による検討[栗田昌裕]
I はじめに
II アーキテクチャと著作権法
III 法による権利の限界──制限規定によって保護される利益
IV 法によるアーキテクチャの統御──著作権の制限規定の貫徹
V 契約とアーキテクチャの協働──デジタル消尽とユーザーの権利
VI おわりに
第9章 著作権とアーキテクチャ──情報法の視点から[成原 慧]
I はじめに
II アーキテクチャとは何か
III 著作権法における法とアーキテクチャの関係
IV 間接侵害者の責任
V 技術的手段の実効性確保のための法規制
VI 利用者によるリンクの設定とプラットフォーム事業者によるアーキテクチャの設計
VII ブロッキング
VIII おわりに
第4編 知的財産と人々の意識
第10章 知的財産をめぐる人々の意識の醸成──現代人類学の視点から[中空 萌]
I はじめに──知的財産をめぐる法学と文化人類学の対話をめざして
II 知識が誰かのものになるとき──マリリン・ストラザーンの所有論から
III 伝統的知識と知的財産権──知識と所有者の設定
ほか
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