ちくま新書<br> 北朝鮮外交回顧録

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ちくま新書
北朝鮮外交回顧録

  • 著者名:山本栄二【著者】
  • 価格 ¥935(本体¥850)
  • 筑摩書房(2022/03発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480074669

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内容説明

歴史的な小泉訪朝から二〇年が経つ。拉致被害者の存在を金正日が認めて謝罪し、一部の被害者の帰国が実現し日本国内に大きな衝撃を与えた。なぜそれは可能だったのか。一九九〇年の金丸訪朝、朝鮮労働党との日朝国交正常化に向けた三党共同宣言署名から、小泉首相による二〇〇二年と〇四年の二度の訪朝、拉致被害者帰国までの間の北朝鮮外交に従事していた外交官によるメモワール。当時の外交を振り返り、対北朝鮮政策の教訓や今後の外交上の留意点を考察する第一級の史料。

目次

第一章 風穴を開ける
金丸訪朝に向け揺れる与党・政府部内
未知の平壌に入る
平壌最初の夜
突然妙香山へ移動
金日成との出会い
金丸団長がいない!?
予想外だった日朝正常化交渉の提案
論議を呼んだ三党共同宣言
穏やかでない韓国
背景には何があったのか
土井・小沢訪朝と金正日の登場
第一八富士山丸の二人の帰国
予備会談で軌道修正を図る
第二章 日朝国交正常化交渉始まる
交渉代表団を平壌に送る
北朝鮮側の代表団を東京に迎える──日朝蜜月期
水面下で北朝鮮側を諭す
李恩恵問題の浮上
核問題をめぐり米国と激しいやり取り
日朝交渉にブレーキをかける韓国
膠着状態の打開に向けて平壌に乗り込む
激動の朝鮮半島と日朝交渉の推移
意外と進んでいた交渉
なぜ交渉は二年弱八回で決裂したか
第三章 第一次核危機──一触即発の事態
突然降ってわいた核不拡散条約からの脱退
安全保障理事会として初めて行動をとる
北朝鮮いよいよ米国と対等に交渉
再び安全保障理事会へ
危機到来と日米韓の連携
制裁への準備
不測の事態に準備を進める東京
カーター元大統領の登場と危機の回避
ジュネーブで米朝協議を追跡する
「米朝合意された枠組み」の署名へ
第四章 軽水炉の供与へ
朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)に飛び込む
潜水艦侵入事件の発生
KEDOは政治的真空には存在しえない
EUの加入をめぐって日米韓で激論
なぜ我々は負担しなくてはいけないのか
それでもKEDOには意義がある
ブッシュ政権の誕生とKEDOの終焉
教訓は何か
第五章 第一次核危機後の日朝関係──九〇年代後半
政党主導の食糧支援
まずは日本人配偶者の里帰りを実現
崩壊の始まり?──何が起こっているのか
四度目の訪朝──惨状を目撃
無関心から敵対へ──拉致問題・テポドン発射・不審船
米朝関係──緊張から急接近
七年半ぶりの日朝国交正常化交渉──小泉訪朝への下地
第六章 第二次核危機と六者協議──核兵器開発への対応
ブッシュ政権の誕生と前政権との差別化
高濃度ウラン問題の発覚と第二次核危機
二国間から多国間へ──六者会談の誕生
ミサイル発射は失敗、そして成功?
ついに核実験が実施される
米国の政策の変化と六者会談の成果
「合意された枠組み」とどちらが有利
ブッシュ政権の八年間は何だったのか
第七章 小泉訪朝と拉致問題が支配する日朝関係
第一次小泉訪朝──先遣隊として平壌に入る
日朝首脳会談──金正日拉致を認める
北朝鮮はなぜここまで譲歩したのか
世論の硬化と副作用
第二次小泉訪朝──再び先遣隊として平壌へ
拉致被害者家族の帰国
最重要課題として浮上する拉致問題──「対話」か「圧力」か
六者会談に組み込まれる日朝交渉
再び扉が開くか?
終章 過去から何を学べるか?
ストックホルム合意と地下水脈
枠組みの崩壊と悪循環の始まり
次の一手は?
対北朝鮮外交の教訓
おわりに
参考文献
参考資料

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

紙狸

20
2022年3月刊行。韓国語ができるキャリア外交官の回顧録。1990年の金丸信訪朝団に同行。その後も対北朝鮮外交の節目節目にかかわった。ピークといえるのは2002年、04年の2回にわたる小泉首相の訪朝だ。著者は先遣隊として裏方を務めた。報じられることの少ない外交の現場だ。本省との間で、秘匿のかかった通信を確保するのはもちろんのこと、日本側同士で連絡をとりあえるようにインマルサットなどを持ち込んだ。日本の北朝鮮政策への考察もある。拉致問題をどう位置づけるか。この点で外務省が苦労してきたことが分かる。2022/05/23

Porco

17
金丸訪朝団からの対北朝鮮外交の流れを、外交官としてしばしばその現場に立ち会った著者が、情景描写も交えながら記述した本。読み物としても大変面白いし、資料としても貴重だと思いますし、非常に勉強になりました。2023/10/17

そうたそ

12
★★★☆☆ 実際に北朝鮮外交に従事した外交官による回顧録。北朝鮮に関連した本には、当たり障りのない情報をまとめたようなものも少ないが、本書は著者の実務経験を、余分な思想を入れることなく、しっかりと回顧録という形で書ききった良書だったように思える。北朝鮮を外側から書いたような本が多い中、割と外交という内側から書いているだけあり、興味深い点が多かった。こうして北朝鮮外交を振り返ると、なぜあの時こうしておかなかったのか……と思うような場面多々。でももう後戻り出来ないところまで来てしまったんだなあと思う。2022/06/04

とある本棚

11
面白かった。もちろん本題は日朝外交の通史的説明であるが、外交交渉の仕方や文言の詰め方など外交実務の一端が垣間見えるところが興味深い。北朝鮮の外交交渉のスタイルは少ないカードを何度も使い回し、譲歩を引き出しては約束を反故にして、またカードを切って譲歩を引き出す、の繰り返しというのは納得。北朝鮮は最高指導者だけでなく、外交の事務方も数十年同じ人物が務め政策の一貫性を保つのに対し、日本は度重なる首相交代でその度に政策が変わったり、外交官も異動したりと、対応な一貫性を欠く構造的問題にも言及されている。2022/09/28

T.Matsumoto

6
あの小泉訪朝から、もう20年になるのか、という驚きのせいで衝動的に購入。文字通り、外務省担当者による北朝鮮外交のオーラルヒストリーであり、北朝鮮、中国、アメリカなどの分析や、交渉時のエピソードはやや少ない印象。筆者が最大の成果とする小泉訪朝も、政治家主導だったせいか、やや記述は少なめ。「圧力」と「対話」が外交の要諦と書かれていますが、この20年を振り返った時、「圧力」とは何だったのかと考えてしまいます。2022/05/03

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