内容説明
『アーモンド』を生んだ「チャンビ青少年文学賞」受賞作品!
――私を苦しめたのは、善意。
マンション火災事故の「奇跡の生存者」ユ・ウォン。
ユ・ウォンの姉は、幼い妹を布団で巻いて11階から投げ落とした後、帰らぬ人となった。
地上で彼女を受け止めたおじさんは、足に重い障害を負った。ユ・ウォンは奇跡の象徴として、おじさんは英雄として、一躍、時の人となった。
あれから12年。いまだに世間は「あの事件の子」という眼差しで彼女を見る。姉は神格化され、「英雄」のおじさんは家をたびたび訪ねてきてはお金を無心していく。
そんななか、ユ・ウォンは同じ高校に通うスヒョンと知り合う。自分とは正反対のスヒョンに影響され、初めて他人に心を開いていくが……。
誰にも言えない、生き残ったことの罪悪感、自己嫌悪、葛藤、矛盾――
数々の痛みを乗り越え、自らの力で人生を取り戻そうとする少女の成長を、瑞々しく描いた感動作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナミのママ
54
12年前のマンション火災の生存者ウォン。狭い街なので誰もが知っている。姉はウォンを助けたあとに死亡し、地上で助けたおじさんも障害の残る身体になった。18歳になったウォン、姉の影が消えない家庭、進路、馴染めない学校。姉への罪悪感、おじさんへの申し訳なさ。色々な思いはいつまでもウォンにのしかかる。対照的な性格のスヒョンと知り合い、少しずつ変化していく姿が丁寧に描かれた青春小説。作中の韓国料理も美味しそうだった! 【チャンビ青少年文学賞・今日の作家賞】受賞作品。2022/05/07
星落秋風五丈原
36
「ごめんなさい。そう思いながら、私は目を覚ました。」 ほら、もう最初から違うのだ。どこの誰が、目覚めた時から謝ったりする?ウォンは一日、一日、罪悪感と共に生きている。自分が忘れようとしても、周囲が忘れさせてくれないのだ。災害や事故などで九死に一生を得た人が、自分が生き残ったことに対して抱く罪悪感、「サイバーズ・ギルト」。ある時から、ウォンは罪悪感と共に生きている。自分が忘れようとしても、周囲が忘れさせてくれない。奇跡のように生きているあなたは、周囲に感謝し、幸せな生活を送るのが“当たり前”だ。2023/03/29
あおでん@やさどく管理人
23
帯にも「善意に苦しんでいる」とあるが、メインはユ・ウォンとスヒョンの交流。スヒョンと時にはぶつかりながらも、内向きだったウォンが少しずつ自分の気持ちを周りに伝えられるようになっていく様子は好感が持てる。2023/09/16
フランソワーズ
19
姉とおじさんに命を救われた少女ユ・ウォンの思春期_。その犠牲の上に立っている自らの罪悪感、人の好意の裏を嗅ぎ取ろうする習性。故に一人になろうとする。ある日知り合った同級生スヒョンとの出会いによって、おじさんという”重荷”を下ろすことができ、ひいては”あの姉の妹”である自分の存在の重さから解き放たれることができた。平易な文章ながらも、ウォンやスヒョンたちの心情を深いところにまで切り込んでいるので、しばしば立ち止まって考えさせられました。→2022/07/10
まる子
19
チャンビ青少年文学賞受賞作(『アーモンド』も)。姉がつけてくれた名前「ウォン(願)」。あの火事がなければ…なぜ私だけが生き残ったのだろう。姉は死に、自分を助けたおじさんは身体に障害が残り、常に姉の影が自分につきまとう。親にも周りにも遠慮する日々。でも彼女がそんな毎日を救ってくれるきっかけになったんだと思う。結局、何かに囚われていても、自分の未来(道)は自分しか切り開けないんだな〜。韓国の高校生の話しなので感覚の違いはあるだろうけど、中高校生ぐらいが読むとイイかも。イ・ヒヨンの『ペイント』も読んでみたい。2022/05/10