内容説明
梨花は寮母、掃除婦、犬屋の女中まで経験してきた四十すぎの未亡人だが、教養もあり、気性もしっかりしている。没落しかかった芸者置屋に女中として住みこんだ彼女は、花柳界の風習や芸者たちの生態を台所の裏側からこまかく観察し、そこに起る事件に驚きの目を見張る……。華やかな生活の裏に流れる哀しさやはかなさ、浮き沈みの激しさを、繊細な感覚でとらえ、詩情豊かに描く。(解説・高橋義孝)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
101
戦後、雨露を凌げる場所を求め、花街で住み込みを始めた梨花さん。しかし、そこは華やかなイメージを裏切るかのような懶惰の伏魔殿であった。鼠が這い回り、病気の犬が死ぬまで放って置かれ、税務署が立ち入り検査に入るまで会計はちゃらんぽらんにされ、海千山千の女たちは汚部屋でだらしなく、過ごしているという女性の生活のリアルさが大変、厭らしいです。特に経血が染み付いた布団で寝るのが嫌で、新聞を敷く侘しさは何とも言えない。後、ちょっとしたことで仮病を使い、注目を集める不二子の姿は少女あるあるで悶絶。2018/12/17
優希
96
一見華やかに見える花柳界ですが、裏の真実を見たような気がします。没落しかかった芸者置屋に女中として住み込んだ梨花。彼女の目を通して語られる花柳界は哀しさや儚さを秘めていました。その繊細さがあるからこそ、美しい夢を抱かせることができるのが芸妓なのかもしれません。2018/04/19
naoっぴ
90
儚くも美しい花柳界の話かと思ったら、どっこい業界裏方暴露話だった。くろうと芸者の表の顔からは想像もつかない普段の自堕落さ、しまりのなさ、てんやわんやの裏方日常はどこか滑稽で、それを見つめる女中・梨花の生来の気の強さもあってか痛快な物語になっている。そこかしこに散りばめられた擬態語に感覚が刺激され、おんなの世界が鮮やかに立ち上る。華やかな世界は浮くも沈むも振り幅が大きい。しなやかではあるが浮き草のような芸者たちに比べ、どっしり雑草のような根をもつ梨花に元気をもらえた一冊。2018/09/04
bookkeeper
85
★★★☆☆ 未亡人の梨花は芸者置屋の女中に職を得る。かつての名店は抱えの芸者も減りつつあり、凋落の気配を漂わせていた。 初日からほぼ説明もなくこき使われても、抜群の判断力で乗り切る主人公。目新しい情報の洪水を、人生の豊富さだと捉える強かさが凄い。失踪して名前しか出ない人、退職して荷物の搬出だけ登場する人、玉の輿に乗る人など芸者の行末は色々。和服の善し悪しに敏感で付届けなどの風習が残り、タクシーが行き交う街。犬猫の糞尿がちらばる家。昭和の中頃へタイムスリップする感じです。いつの時代も生きていくのって大変。2021/04/17
Gotoran
71
寮母、掃除婦、犬屋の女中を経験した40歳過ぎの梨花が、斜陽しかかった芸者置屋に女中として住込み、花柳界の風習や芸者たちの生活ぶりを台所の裏から事細かく観察していく・・・著者が幼い頃から親しんだ隅田川沿いの風景と町並み、人々の暮らしぶりを背景にして、華やかな芸者生活の裏に潜む哀しさや儚さ、激しい浮き沈みを、繊細な感覚で詩情豊かに描き出されている。著者ならではの緩やかな話し言葉のように紡ぎ出された美しい言葉(日本語)が印象深かった。2023/02/15
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