内容説明
教会の聖具室で血溜まりの中に横たわっていた二つの死体。殺されていたのは、浮浪者ハリーと元国務大臣のポール・ベロウン卿だった。一見何の関係もないような二人がなぜ同じ場所で死んでいたのか。そして、死の直前のポール卿の不可解な行動は事件にどうつながるのか? 繊細な感性と鋭敏な知性で難事件を解決してきたダルグリッシュ警視長がベロウン家の秘密を解き明かす。著者の代表作にして英国推理作家協会賞受賞作
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
くたくた
76
アダム・ダルグリッシュシリーズ、文庫新版。原作は1986年、まだ携帯電話はない。政界や上流階級の取扱いに注意を要する重大事件の専門チームを結成したばかりのダルグリッシュ警視長が陣頭指揮をとって、閣僚級政治家の不審死を追う。上巻はまだまだ風呂敷が広くなるばかり。章を追うごとに関係者が増え続け、秘密の多かった被害者(辞任した閣僚で、若手有望株の保守党議員)の私的生活はまだ謎に包まれたまま。ダルグリッシュの捜査にあたる態度は冷徹にも見えるが、彼の過去や成熟した人間味や温情や心情がちらりと表現されてくすぐられる。2022/03/05
雪月花
53
1か月かかってようやく読了。先にダルグリッシュシリーズのドラマを見てしまったので、犯人が誰かわかりながらの読書となったが、ドラマでは端折られている部分が多く、やはり小説の方が情景描写が詳細で断然面白い。国務大臣と浮浪者の教会内での惨殺死体の謎。そして過去の二人の女性の殺人事件も絡まって、誰もが容疑者に見えてくる展開はフーダニットの典型だが、逆に混乱を極めて捜査は行き詰まる。ドラマでもケイトが良い味を出していたが、小説でもケイトが冴えている。訳も読みやすい。下巻へ続く。2023/01/20
まふ
39
ロンドンの聖マシューズ教会の聖具室で浮浪者ハリーと下院議員ベロウン卿が惨殺体で発見された。他殺と見てダルグリッシュ警視長指揮下の捜査陣が捜査を開始する。ベロウン家の長老レディ・アーシュラ、妻のバーバラ、その愛人ランバート医師、バーバラの兄スウェイン、娘サラ等に順次聴取するが家政婦、看護婦の死とも絡んでいるようだ、というところで上巻は終わる。それぞれのアリバイのエピソードが丁寧に語られ、作者の蘊蓄なども入って、さっさと進めてほしいという苛々感が生じるが、下巻への「溜め?」と諦めて我慢する。2022/09/22
本木英朗
23
英国の女流本格ミステリ作家のひとりである、P・D・ジェイムスの長編のひとつである。教会の聖具室で血溜まりの中に横たわっていた二つの死体。殺されたのは、浮浪者ハリーと元国務大臣のポール・ベロウン卿だった――という話から始まる。うーん、まったく分からず仕舞いだよねえ、うん。ダルグリッシュ警視長がどうやって真犯人を捕まえるのか、とにかく下巻に進むしかないって! ではでは、また。2022/06/05
花乃雪音
17
アダム・ダルグリッシュ警視シリーズ7作目。ドラマ放送を機に刊行された新約版。教会で元大臣が殺される、さらになぜか浮浪者も一緒に殺されていたのだ。本作の前に同作者の『皮膚の下の頭蓋骨』を読んでいたので本作は死体が発見されるのが早いことが第一印象だった。このまま本格推理小説で終わらせることができそうに思える謎を広げることに終始した上巻だった。2022/03/09
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