内容説明
寄生虫の生態学および進化学的に重要な研究例を体系的にまとめあげ,分野における研究レベルを押し上げた革新的な教科書“Evolutionary Ecology of Parasites(Second edition)”の待望の邦訳。原著出版から10年以上が経過した現在においても,本書は世界各国の専門家に影響を与え,研究の手引きとして,あるいは分野を俯瞰するためのスタンダードな情報源として利用され続けている。今やこれを読まずして寄生虫の進化生態学的研究は不可能と言っても過言ではない。
国内外問わずこれまで多くの教科書が寄生虫のネガティブな側面に目を向け,宿主に与える影響やその制圧・制御にページを割いてきたが,本書では寄生虫を生態系の一員として見つめ直し,一貫して生き物としての純粋な興味・関心について丁寧に説明を重ねている。本書を読むことにより,寄生現象を個体レベルから群集レベルに至るまで階層的に深く理解できる。終章においては将来的な気候変動や防除に対する示唆に富んだ応用的指針ももたらしている。本書が提示する課題は日本の関連分野においても挑むべき内容であり,将来的な発展に貢献するであろう。
[原著:Evolutionary Ecology of Parasites: Second Edition, Princeton University Press, 2007]
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
人生ゴルディアス
8
ものすごく面白かった。寄生虫というと宿主との特異な関係や、特に中間宿主の行動を改変し終宿主に食べられやすくする話などがよく取り上げられるが、本書はそういう話ではなく、寄生虫の進化を導く淘汰圧とはなにか、宿主内で他の寄生虫とどんな関係を築いているかなど、種としての生態または進化に関する観点が10章に渡って網羅されている。同時に、ある仮説を検定するための帰無仮説や、ある観察事象からどんな推論ができるかなど、寄生虫に限らず広く科学的思考一般に共通する知啓が詰まっている。2023/08/22
イシュア
2
寄生虫だけの話ではないです.すっごい骨太な進化生態学の本でした.正直,今はまだ研究に活かせないという点で,身を入れて読むのが難しい章も多かったですが(自分の知識不足もあります),自分にとってずっと重要な書籍であり続けそうです.2022/10/03
takao
1
evolutinary ecology of parasites 2nd2022/04/18