内容説明
ようやく、海に戻れる――。デスクワークに頭を悩ませる日々を経て、艦長に抜擢された、早乙女碧二佐。あおぎりはヘリを搭載する本格的な護衛艦で、艦乗りとして胸の高鳴る職場である。だが、いよいよ待ち望んだ初出港、というときに、電測員一名が姿を消したことを知る。このまま出港すべきか、否か。三尉として海上自衛隊に身を置いた著者が、女性指揮官の誇りとリアルを描く。新たなる組織小説の誕生。(解説・村上貴史)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
147
戦闘艦の生活を描いた話だが戦闘は生じない。扱われる事件は他愛ないほど小さいが、艦長の個性が出る解決法だった。自衛隊と言えども人の集合だ。こういう悩みは普遍的なのだろう。こんな些事に艦長自ら解決、しかも出航前に持ち場を離れるなど…まぁ良い方策とは思えないが、男社会の中で女指揮官が凛々しく活躍する姿は素敵だ。シリーズの最初の巻らしい。続編に期待。2022/11/11
パトラッシュ
136
フォレスターやケントなど英国の海洋冒険小説は敵艦隊との海戦シーンが最大の魅力だが、主人公が新たな艦の艦長となって多くの将校や乗組員を掌握していくプロセスも人間ドラマとして不可欠だ。仮想戦記ではない現実の海上自衛隊護衛艦が舞台の本作は最初から戦闘描写が期待できず、ほぼ後者のみで展開されるのは当然か。しかも男ばかりの軍艦に女性艦長が乗り込む設定なので、企業や官庁で女性リーダーが悪戦苦闘する話と通じる。その意味では確かに組織小説だが、海を愛し人を愛する早乙女碧が国防の最前線で成長していく物語としても期待できる。2022/08/07
のり
79
護衛艦の艦長になるのにも凄い事なのに、女性艦長とはカッコいい。170名の部下を従え守るのはハンパない重責である。しかも着任の日から、予想しない事が立て続けに起きた。判断に迷いは禁物である。部下も一癖も二癖もある猛者揃い。認められるかの試練でもある。型に嵌らない艦長を「早乙女碧」目指して欲しい。2022/11/03
ひさか
45
2022年3月新潮文庫刊。書き下ろし。シリーズ1作目。女性海上自衛官44歳の艦長のストーリー。話の70%が、海上自衛隊、護衛艦の説明に始終して、艦長の活躍は少ない。次回をお楽しみに…というところですか。2022/07/15
海燕
25
元海上自衛官の著者だけあって、護衛艦の装備、海自の組織、艦内での号令や会話に至るまで、詳細でリアル。でもストーリーはそれ以上に面白い。主人公が護衛艦あおぎりに艦長として着任するところから話は始まるが、初日に一人の若い女性隊員が定刻までに帰艦せず、服務事故に。これが単なるエピソードではなく、本作の柱になる。女性隊員の悩める姿を等身大に描きながら、彼女の捜索を通じて、艦長として自分なりの姿勢を示そうと奮闘する主人公も鮮やかに描き出す。精強さより優しさが感じられる主人公。こんな自衛隊小説もよいではないか。2023/04/08
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