内容説明
あなたといるとき
わたしは
自分のことを
忘れていられる
懸命に
生きようとさえしないまま
今だけをじっと
味わっている
しあわせか
どうかも 考えず
ただ 今
このときだけは
美しいと 感じている
――美しいとき
悲しみとは 何かを愛した証し
悲しみ、祈り、愛すること。
暗闇で手探りするように、一語一語、つむがれた言葉の捧げ物。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Y2K☮
37
凛とした佇まいの詩集。全ページを引用したくなる。大事な何かを失った悲しみ。後知恵で折り合いを付けるのではなく、ただ共に生きていく。静かで穏やか。だからこそ柳のようにしなやかに現世の不条理を受け流せる。表紙の鮮やかな色合いと手触りの心地良さも素晴らしい。谷川俊太郎「あたしとあなた」を思い出すなあ、と感慨に耽っていたら、この本の装丁も同じく名久井直子さんだった。紙の本ならではの美しいときを堪能した。2022/02/09
Ayakankoku
14
若松さんの紡ぐ言葉はどれも優しく丁寧で心に響くものばかり。今回も非常に良かった。Amazonで購入ボタンを押してしまった。2022/07/11
双海(ふたみ)
12
「詩を/つむがなければならない/言葉を 失いそうになる/悲しみの前で」・「悲しみとは/何かを愛した/証しだから」2022/03/03
T
11
若松英輔さんの詩集は2冊目だが、渇き切った心に澄んだ雫をたらしてくれるような、そんな感じがする。 やはり、言葉を大切にしていて、私も人に、自分なりの言葉を、綺麗でなくてもいいから贈りたいと思った。2022/02/11
沙羅双樹
8
若松英輔氏の詩には「あなた」が数多く出てくる。その「あなた」は読み手に取って、大切なあの人や自分自身に重ねられる。そんな風に想いを寄せて読んでいくと涙が出てきた。推薦本。2023/03/21