内容説明
犯行後、激しい苦悶に覆われたラスコーリニコフ。その前に現れたのは、年若いソーニャだった。息もつかせぬ展開、緊迫した心理描写。年月を越えて読み継がれる、巨匠の大傑作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
吉田あや
74
耐えがたき程の狭量さを披露していく吝嗇家のルージンがネチネチと姑息さをフル発揮している頃、熱き男ラズーミヒンは叔父のお金と愛する彼女のお金を合わせて出版業を始めよう!と一人盛り上がり、愛すべき駄目男こと我らがラスコーリニコフは現代のSNS社会に通ずる正義病にいち早く罹患。正論で追いつめ、善の人を断罪し厭うが、自分は何一つ正しい行いはできぬまま千々に心を搔き乱すばかりと、陰鬱さ極まれりな下巻。惹き込まれながらも疲労困憊状態で読了。(⇒)2021/05/09
Shinobi Nao
22
長かった~。何度も挫折しそうになりつつ、ところどころ話の筋を見失おうが「とにかく最後まで読む」ことを目標に、どうにか読み切った。この作品がこんなにも世界中で、そして長きに亘って「名作」とされている所以はまったくわからない(そこまで読み解けていない)し、今は長かった苦しみからの解放と読み終わった達成感しかないが、難産の直後に「もう一人産みたい」と思う母のような気持ち(知らないけど)で、一生のうちもう一度くらいは読んで、次はもっと物語にどっぷり入り込んでみよう、なんてことを思っている。2016/06/09
東京湾
17
「僕はおまえに頭を下げたのじゃない。僕は人類全体の苦痛の前に頭を下げたのだ」追い詰められ錯乱していく精神の果て、ラスコーリニコフは愚純なる狂信の娼婦ソーニャの姿に道を見出す。この物語の根幹を成すものは『信仰』だと思う。富であれ貧であれ人間はただの人間としてしか存在し得ない。そこで初めて罪と罰が問われるのではないだろうか。深遠な一大巨編であり一級のサスペンスでもあり、緻密な心理描写に息をのむ、本当に面白い小説だった。スヴィドリガイロフの最期など個人的に不明瞭な部分も多いため、いずれ別の訳でも読んでみたい。2019/09/22
めりっく
14
ラスコーリニコフとポルフィーリーとの三度に亘る緊迫の心理戦。どんな時も主人公を信じ支えるラズーミヒンの友情。主人公への敵愾心からソーニャに罠をかけた卑劣漢ルージンを撃退する痛快。主人公の妹ドゥーニャに金と脅迫で取り入り拒絶されたスヴィドリガイロフの哀れな末期。ソーニャの母の報われぬ人生の悲哀。選民思想に逃げ込む主人公をもう一度大地に立たせようとしたソーニャの説得と、覚悟の自首から引き返そうとした彼を見届けていた彼女が沈黙の内にもう一度促す場面の感動。罪を許される人はいないし、罰を免れ得る思想に根拠はない。2025/03/06
sashi_mono
14
上巻はチビチビと舐めるように読み進め、下巻は淀みなく一気呵成に読破した。おもしろかった。作品を執筆した時期が江戸時代の末期というから驚いてしまう。つづけて、プーシキンの『スペードの女王』を読めば、この作品との共通項がうかがえますよー。2018/07/09