内容説明
この本のテーマは《伝える》ことです。私たちは、この本で、数学的に正当な思考・数学的な事実を、どうすれば文章にして他者に伝えられるか、懸命に説明しています。ちょっとした言葉づかい、論理的な説明の順序、条件と命題の違いの意識、いろいろな文字の立場の理解・・・・・・きっと、読者の皆さんの考えを読み手に《伝える》ために、すぐ役立つはずです。(中略)数学の答案作りとは、自分と読み手のあいだに小さいながらも数学の世界を築く作業です(抽象的な言い方ですが、数学的に正しい主張とは、常に完結した、バランスの取れた小宇宙です)。自分の知性と読み手の知性、双方を信頼し、両者の思考をつなぎ、そこに確固たる数学的結論を創造する。この営みは、多くの中高生が考えているより、ずっとやりがいのあるものです。この本を手に取られたあなたが、この本を通じて答案作成の方法を知り、そのたのしみに触れていただけることを祈ります。それでは、《伝える》レッスンをはじめましょう! まえがきより
※本書は、2022年4月からの新指導要領には対応していません。あらかじめご了承ください。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
だいき
6
数学の答案の書き方にフォーカスを当てた一冊。 数学の記述を学ぶことは論理を学ぶことに他ならないと思った。とくに同値変形になっているかを意識することが大切だと感じた。 一通り基礎を学んだ受験生や教える側の人にオススメ。2020/10/06
P.N.平日友
5
受験対策ではなく、ものごとをクリアに美しく考えるためのヒントになるかもと思い読了。同値変形などテクニック的な要素はとても参考になったのはもちろん、問題(数学に限らず)に対する向かい方が変わった気がする。読み手に対する意識、論理がスムーズになるための接続詞、フレーズなど学生時代に教えてほしかったと思うことがたくさん記載されていた。たくさん経験することも大事だけれど、オーソドックスなものを一般化、深掘りしていくことの大事さをあらためて思い知った。あと、記述のしかたについて書かれた本はなかなかみない気がする。2020/04/17
はんげつ
4
「解答者と採点者の間に意思が疎通されなければならない」という観点から、数学の答案をどのように書けばいいのかを、ごく基本的なことから発展的なことまで網羅している本です。どんなに数学が得意な人でも、ドキッとする内容がどこかにあるのではないでしょうか。同値変形に関する記述法や、一章まるごと使った軌跡・領域の議論は必見です。2020/02/08