内容説明
ふるさとの漁村から、激しい空爆を生き延び、たどり着いた海もない「ハレルヤ村」。
反政府ゲリラ軍と政府軍との双方に追われたタミルの人びとに「本当に起きたこと」とは何だったのか。
爆薬を用いたテロ攻撃、性暴力を伴う残忍な殺人、暴力事件のやまぬなか、著者は繰り返し現地を訪れ、村人たちの生活に身を沈めた。
数百年にわたり貫かれてきたカトリックへの信仰、村を挙げての徹夜のミサのようすを描き、国際社会からも忘れられつつある人びとに寄り添う、エスノグラフィの新しい達成
目次
第一部 ハレルヤ村との出会い
一、行き止まり──二〇〇六年夏
二、最大の問い──二〇〇七年夏
第二部 ヴェラ家と周辺の人びとの物語
三、バトル・オヴ・ヴァンニ──二〇〇九年四月
四、クエートから届いた柩──二〇〇九年十月~十一月
第三部 シシリア婆さんの帰郷
五、不思議な行進──二〇一〇年三月
六、イエスの柩──二〇一〇年四月
参考文献・読書案内
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
noko
4
スリランカ内戦の本。スリランカの内戦は26年間続いた。死者数10万人以上、難民(国内外含む)20万人以上。数字で示されると無機質に感じる。無機質な数字を見ただけで、実際に傷ついたその人の人生を読み取るのは難しい。しかし、この本は、内戦でスリランカの人々が、一人一人どんな風に生きてきたのかフィールドワークをして伝えている。日本人女性研究者が、指導者に反対されても続けた研究。現地のキリスト教のシスター達との活動、時には日本企業までに協力を求めて、北部を訪ねている。ロケット弾が飛び、政府軍も信じられない。2025/06/14
しゃる
1
随分前に読んだので記憶が曖昧だが、良かったと思う。紛争の緊張感が尾を引くスリランカにて、キリスト教関係者の傍でフィールドワークをしていた当時博士課程の著者による民族誌。信仰を共有しない調査者に対する問いかけが、恐らく、論文外での最も大きな問いになり得たのではないか。2024/03/15