内容説明
私たちが自明としている力学的世界観の成立には、古典力学と古典重力論にもとづく天体力学、とりわけ“重力”概念の確立が大きな影響を与えている。本書は、“重力”理論完成までの思想的格闘の足跡を原典に則して丹念に辿りつつ、誤りや迷いといった紆余曲折までも含めて詳らかにする。先人の思考の核心に「同時代的」に肉薄する壮大でドラマチックな力学史。上巻は、ケプラーにはじまり、ガリレイ、デカルトをへてニュートンにいたる力学方程式確立の歴史、オイラーの重力理論までを収録。
目次
まえがき
第1章 重力とケプラーの法則
I 楕円軌道の衝撃
Ⅱ ピタゴラス主義者ケプラー
Ⅲ 楕円軌道への途
Ⅳ 原因としての重力の追究
Ⅴ ケプラーの重力論
Ⅵ 「ケプラーのアキレス腱」──慣性
Ⅶ ケプラーにおける惑星運動の動力学
Ⅷ ケプラーにとっての重力
第2章 重力にたいするガリレイの態度
I 潮汐と重力──ケプラーの理論
Ⅱ ガリレイの潮汐論とケプラー批判
Ⅲ 機械論的自然観と重力
Ⅳ ガリレイにおける科学の課題
Ⅴ ガリレイにおける法則概念と真理概念
Ⅵ 自然認識における「コペルニクス的転換」
Ⅶ 所与としての加速度とガリレイの慣性
第3章 万有引力の導入
I ニュートンの物質観と重力
Ⅱ 万有引力を帰納する
Ⅲ 運動方程式を解く
Ⅳ ニュートンの飛躍
Ⅴ 万物の有する重力
第4章 〈万有引力〉はなぜ〈万有〉と呼ばれるのか
I アリストテレスの二元的世界
Ⅱ 二元的世界の動揺
Ⅲ ガリレイの『星界の報告』
Ⅳ ニュートンによる世界の一元化
Ⅴ 地球の相対化と中世の崩壊
Ⅵ ガリレイ裁判の一断面
第5章 重力を認めないデカルト主義者
Ⅰ 『プリンキピア』の時代
Ⅱ ヴォルテール
Ⅲ ニュートンの潮汐論
Ⅳ デカルトにとっての学
Ⅴ デカルトの物質観
Ⅵ デカルトにとっての力
Ⅶ 重力は〈隠れた性質〉である
Ⅷ 機械論的自然観と自然力の排除
Ⅸ ふたたび機械論による重力批判について
Ⅹ デカルト主義の明暗
第6章 「ニュートンの力学」と「ニュートン力学」
I ベントリー
Ⅱ 哲学することの諸規則
Ⅲ 仮説を作らないということ
Ⅳ 近代科学の方法
Ⅴ ニュートンにとっての重力の原因
Ⅵ 現象より神に及ぶ
第7章 重力と地球の形状
I 問題の設定
Ⅱ ポテンシャルの導入
Ⅲ 地球の形状とポテンシャル
Ⅳ 地球の扁平率
第8章 オイラーと「啓蒙主義」
I 「通常科学」の時代
Ⅱ フリードリヒ大王とベルリン・アカデミー
Ⅲ 女帝エカテリナ
Ⅳ 哲学ばなれしたオイラー
Ⅴ 空間の問題と慣性法則
第9章 オイラーの重力理論
I 見失われた書──『自然哲学序説』
Ⅱ 物体の普遍的性質
Ⅲ 不可透入性と力
Ⅳ オイラーのエーテル理論
Ⅴ 重力論
注
感想・レビュー
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maqiso
The pen is mightier than the sword