ちくま新書<br> 格差という虚構

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ちくま新書
格差という虚構

  • 著者名:小坂井敏晶【著】
  • 価格 ¥1,100(本体¥1,000)
  • 筑摩書房(2021/11発売)
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  • ISBN:9784480074287

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内容説明

格差の問題を前にして、我々はいったい何を求めているのか。人々を選別する〈能力〉とは何か──。学校は格差再生産装置であり、遺伝・環境論争の正体は階級闘争だ。だが、メリトクラシーの欺瞞を暴いても格差問題は解けない。格差は絶対になくならないだけでなく、減れば減るほど人間を苦しめる。平等とは何か。平等は近代の袋小路を隠すために我々の目を引きつける囮であり、擬似問題にすぎない。世に流布する議論の誤解を撃ち、真の問いを突きつける、著者最後の虚構論。

目次

はじめに──的外れの格差批判
序章 格差の何が問題なのか
能力という虚構
近代が仕掛ける囮おとり
格差がなくならない理由
規範論は雨乞いの踊り
私論のアプローチ
本書の構成
第1章 学校制度の隠された機能
学歴と社会階層
平等主義の欺瞞
支配の巧妙な罠
メリトクラシーと自己責任論
諦めさせる仕組み
日本の負け組
第2章 遺伝・環境論争の正体
ブルジョワジー台頭と進化論
知能テスト産業の発展
学問とイデオロギー
人種神話
相関関係の 
遺伝と先天性の違い
遺伝論と新自由主義
第3章 行動遺伝学の実像
知能指数の矛盾
養子研究
双子研究
双子の個性
加齢による遺伝率上昇
遺伝率上昇の真相
遺伝率の誤解
第4章 平等の蜃気楼
擬制と虚構
主権という外部
個人主義と全体主義の共謀
裁判の原理
主権のアポリア
選挙制度と階級闘争
見えざる手
解の存在しない問い
異端者の役割
正義という名の全体主義
第5章 格差の存在理由
フランスの暴動
革命の起爆装置
比較・嫉妬・怒り
平等のジレンマ
近親憎悪と差別
第6章 人の絆
個人と社会の関係
贈与の矛盾
臓器国有化の目的
人肉食と近親相姦
同一化と集団責任
ユダヤ人という虚構
ユダヤの運命
同一性の謎
死者との絆
第7章 主体という虚構
内因幻想
意志と行為の疑似因果
意志の捏造
非決定論の誤解
両立論の詭弁
原因究明と責任のパラドクス
自由意志の歴史背景
神の擬態
自由意志という政治装置
犯罪とスケープゴート
処罰と格差の論理構造
終章 偶然が運ぶ希望
偶然の突破口
 から出た実まこと
偶然と必然の密約
価値の生成メカニズム
信頼の賭け
偶然が紡ぐ未来
あとがき
引用文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

syaori

75
「人間は他者との比較を通してアイデンティティを育む」、だから格差を望むのは人間の本性で、しかし「人間に本質的な違いがないとされる」近代では格差が生まれる仕組みをごまかし続けなければならないと作者は言う。そして近代以前の、階級・身分をアプリオリに保証する「神なる外部」を失った近代は、その根拠を個人に内在化させたことが示されます。主体や個人の能力等はそのための架空の概念だということを論証してゆく本書は、理想の社会を目指すのとはまた違った角度から世界の見方と変え方を示していて、大変スリリングな体験になりました。2025/02/07

アナクマ

35
7章_主体という虚構。「社会秩序を維持する術は…神にしがみつくか、自由意志にしがみつくか…他にない」。例えば犯罪の責任は誰かに引き受けてもらわねば社会的に収まりがつかないので、”自由意志によって犯罪を成した“ とみなされた者が処罰される。◉前章までに議論した「遺伝・環境・偶然という外因」が人間を作る、を受け入れるなら「どこを探しても内因は見つからない」。まとめると、① “能力”に自己責任はなく、それに因る格差は正当化されない。②しかし格差はなくならない(問題の本質は差異を生む”運動“である)。いざ終章へ。2022/08/26

アナクマ

35
1章_「格差」についての考察。メリトクラシー原理は、出身階層という足枷を逃れ自らの能力しだいで未来を切り開ける社会像を提案して歓迎された。しかし、機会均等で自由競争の結果もたらされた格差は受け入れるしかないという自己責任論につながり、本質的に負け組を突き放す思想だとし「不幸な目に遭った者は悪いことをしたに違いない」という因果応報論を問題視。そして「学校は学力差を拡大するが、そのメカニズムは隠され、学力差は生徒のせいにされる」ことを確認する。◉学力差と格差が等しく語られている気がするけど、続く。2021/12/09

チャーリブ

30
初読の人。タイトルがその内容を表している。議論は一見難解そうだが、その主旨は分かりやすい。ちまたにあふれる「格差論」は、格差をいかに解消すべきかといった「べき論」であって、そもそも格差が社会のシステムから生み出された虚構だという観点がないという議論が続く。虚構と言われてしまうと苦しんでいる人には身もふたもない。みんな「悪役」を知りたがっているのだから。一般受けしない本かもしれないが興味深い内容。希望は、「偶然の力」を信じるところから始まる。「あとがき」まで読むと著者が議論を弄ぶ人でないことが分かる。○2021/11/27

アナクマ

28
序章と終章だけ読んで勇み足の期待感メモ。◉過去作で民族も責任も虚構だと導出し、しかし「虚構のおかげで現実が生成される」と論じた著者。「格差も同じ欺瞞にまみれている」のだが「私の実存が抵抗した」。ここがいい。血が通っている。◉格差は厳然として有る。では例えば格差を説明しうる根拠「能力」とは何か。「格差問題自体を越え」るために、ピケティ、サンデル、ロールズなどを向こうに回し「この方向に解決はない」とぶち上げる。「格差は虚構」だが「不平等に怒」る著者がどこにたどり着くのだろう。スリリングな読書が三たび始まった。2021/11/30

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