趣味とジェンダー - 〈手づくり〉と〈自作〉の近代

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趣味とジェンダー - 〈手づくり〉と〈自作〉の近代

  • 著者名:神野由紀/辻泉
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  • 青弓社(2021/11発売)
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  • ISBN:9784787234520

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内容説明

ハンドメイドは女性、プラモデルは男性――ものづくりの趣味は男性らしさ・女性らしさと強固に結び付き、趣味としてただ楽しんでいるつもりでも性別役割分業と密接な関係を築いてきた。

「ジュニアそれいゆ」(1954―60年)と「子供の科学」(1924年―)という2つの雑誌を読み込み、手芸・人形・インテリアなどの女性と結び付けられる〈手づくり〉と、工作・模型・ミリタリーなどの男性に割り当てられる〈自作〉をキーワードに、手づくり趣味の近・現代史を描き出す。

コミケやデザインフェスタの盛況、郊外に点在するホームセンター、「Instagram」にあふれるハンドメイド――現代の「あえて自分で作って楽しむ趣味」の源流をたどり、男性・女性に分かれ、双方が排他性をもってしまう手づくり趣味をめぐる文化の内実に迫る。

目次

序 章 手作りとジェンダー 神野由紀/辻 泉/飯田 豊
 1 趣味・デザイン・ジェンダー
 2 少年少女雑誌の基本データ

第1部 家庭生活に役立つ〈手づくり〉

第1章 「ジュニアそれいゆ」にみる少女の手芸 山崎明子
 1 「ジュニア」の手芸
 2 手芸をする少女の理想
 3 言説の発信者としての男性知識人
 4 忌避された「手芸」

第2章 「少女の友」「ジュニアそれいゆ」における「少女」「ジュニア」の人形 今田絵里香
 1 「幼女」の人形――テンプル人形論争
 2 伝統工芸品・芸術作品としての「少女」の人形
 3 日用品としての「ジュニア」の人形

第3章 インテリア手芸と工作の時代 神野由紀
 1 「ジュニアそれいゆ」における手作り
 2 「ジュニアそれいゆ」から「私の部屋」へ

第4章 女子学生と手芸――「ジュニアそれいゆ」世代からの継承 中川麻子
 1 女性コミュニティと手芸
 2 「手芸」から「ハンドメイド」へ

第2部 〈自作〉する少年共同体

第5章 科学雑誌から生まれた工作趣味、鉄道趣味――戦前/戦中/戦後の「子供の科学」の内容分析から 辻 泉
 1 なぜ科学雑誌なのか
 2 「子供の科学」の内容分析
 3 「子供の科学」は何を伝えてきたのか
 4 工作趣味、鉄道趣味の形成過程を振り返る

第6章 工作記事は少年たちに何を語ってきたのか――戦前・戦中の「発明」に見る実用主義の精神 塩谷昌之
 1 数値から見る工作記事の変遷
 2 時代の技術と乗り物工作
 3 工作記事が少年たちに語ったこと
 4 戦前/戦中/戦後での変化の考察

第7章 動員される子供の科学――戦時下の工作と兵器 松井広志
 1 戦時下の工作
 2 一九四〇年代前半の「子供の科学」の位置
 3 戦時下の「子供の科学」における軍事と模型
 4 〈動員される子供の科学〉と工作/手芸

第8章 「科学」と「軍事」の呪縛――一九五〇年代の航空雑誌での模型工作の営み 佐藤彰宣
 1 航空雑誌と模型工作の関係
 2 航空雑誌編集者の遍歴――戦時体制前後の模型飛行機と雑誌
 3 航空雑誌が誘う模型工作の営み
 4 戦記ブームとの連動

第3部 〈手づくり〉と〈自作〉の境界を揺さぶる趣味の実践

第9章 日曜大工の社会史――男性の手作り趣味と家庭主義 溝尻真也
 1 日曜大工にみる二重のジェンダー性
 2 余暇活動としての日曜大工
 3 日曜大工の展開

第10章 DIYとしての自主放送――初期CATVの考古学 飯田 豊
 1 趣味文化としてのCATV
 2 自作趣味×婦人会活動――郡上八幡テレビ
 3 「Do It Yourself わたしのテレビ」――津山放送
 4 プロシューマーとジェンダー

第11章 「社会化」する自作庭園鉄道――桜谷軽便鉄道のいま 塩見 翔
 1 桜谷軽便鉄道とはなにか
 2 桜谷軽便鉄道の製作背景
 3 公開運転会とボランティアスタッフ
 4 ボランティアスタッフが創造する「運転免許」制度
 5 避けられたNPO化

あとがき 神野由紀

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

くさてる

16
女性と結び付けられる、手芸や人形、インテリアという趣味と、男性に割り当てられる、工作、模型、ミリタリー趣味などを通じて、男女の手作り趣味のジェンダーについての近現代史を紐解いた研究結果。個人的には、いわゆる「手芸」の時代による変化は日本女性を理解するためにも本当に面白いものだと思うので、そこについての大々的な調査と研究をもっと読みたくなりました。興味深い箇所がたくさんあります。2019/11/30

アメヲトコ

10
手芸やハンドメイドなどの女性の〈手づくり〉の世界と、模型工作などの男性の〈自作〉の世界。何かを作る趣味という点では共通するのになぜ互いに排他的な棲み分けが成立しているのか。その歴史的な構造を、児童向けの啓蒙雑誌記事を読み込むことで分析した共同研究です。その流れは単純ではなく、例えばDIYは本来ジェンダーレスな世界であったのがしだいに男性の領域に移行したとか、戦前・戦中は航空機や船舶の後塵を拝していた鉄道趣味が、戦後軍事色が排除されるなかで結果的に男性の第一の趣味として浮上したなどの指摘は興味深かったです。2019/07/29

Ramo

1
家を美しく飾る、美しいものをつくることで「自分らしさ」を表現できるという男性社会によって理想化された少女像。未だに多くの女性の中に在る気がする。2022/10/11

飯田一史

1
「大正後期、少年雑誌メディアが作文から工作へと読者の関心を誘導した背景には、国家的な要請のもとで優秀な技術者を育成するという目的があったことは明白である。模型工作は実物を理解し再現する作業であり、その完成形に逸脱の余地はない。また、電気製品など科学技術を用いる工作で追求されるのは、機能的な部分をどのように創意工夫していくかという、徹底した機能主義である。少年たちは、生産効率を重視した産業化社会での役立つ人材となるべく、趣味の方向性を定められていったのである。」一五ページ2019/09/27

ガジ

0
「ジュニアそれいゆ」が取りあげられているのをきっかけに師匠に紹介して頂いたやつ。個人的には第2部の<自作>する少年共同体の論文が面白かった。あと10章の自主放送の論もよかった。2022/03/15

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