内容説明
ときは平安時代、京の都。
主人公・平貞道は、仲間の季武とともに、源頼光に仕えている。
ある日、季武は新入りの渡辺綱に得意の弓で負け、ふさぎこんでしまう。
季武のため、貞道と友人の公友は、紅葉を見に山へ連れだすが、そこで彼らは鬼の歌声を耳にする。
それ以来、季武は人の力とは思えぬような活躍をするようになるが、次第にやつれていく。鬼は、自分が宿れる古木を探しており、そのために季武に宿って、京へきたのだ。一方、貞道は季節外れに花びらを舞わせる桜の古木と、その木を愛でる桜の姫と出会うのだが……。
貞道は、ふとしたことから助けあうようになった白きつね・葉月とともに、季武に宿る鬼を取りのぞこうと奔走する。
「鬼の腕」の伝説を下敷きに描かれる、のちに頼光四天王とよばれる若武者たちの物語。平安朝ファンタジー第2弾。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぶち
97
『きつねの橋』の続編。 この巻に頼光四天王の筆頭・渡辺綱が登場! 綱が鬼の腕を切りおとしたエピソードは歌舞伎になるほど有名ですが、作品中でも鬼の腕を切り落とします。でも、鬼が悪者としてではなく住処を失くした悲しい存在として描かれているのが、作品に趣を与えてくれて、よりいっそう物語の世界に入り込んでいきます。そして、五の君が足繁く通う"桜の姫”が鬼を受け入れるシーンがとってもよかったです。 歴史に登場する人物とファンタジーが融合した物語は、大人でもたいへん楽しめます。2021/11/18
nico🐬波待ち中
82
『きつねの橋』の続編。平貞道を中心に、平季武、公友、白きつね・葉月のオリジナルメンバーに渡辺綱が加わり、物語にますます深みが出てきて前回以上に面白かった。弱みにつけこまれ鬼に取り憑かれてしまった季武を助けようと、力を合わせて鬼に挑むみんなのチームワークが良かった。実際の伝説『鬼の腕』をモチーフにしているためファンタジー要素にも説得力があり読み応えもある。古木の桜の花びらや紅葉の葉が優雅に舞う様子も映像が浮かぶ位素敵で、児童向けにしておくのは勿体ない。ぜひ大人用の小説にしてほしい。更なる続編にも期待したい。2022/06/17
真理そら
65
『きつねの橋』の続編を読めるとは(嬉)渡辺綱が登場して鬼の腕の話が展開するが…渡辺綱ってこんなに性格が悪かったっけとおもったり。五の君(藤原道長)が源雅信の娘・桜の姫(倫子)に懐いていく様子が微笑ましい、が、個人的には倫子のイメージが桜の姫という雰囲気ではないので、渡辺綱の造形同様に新鮮味があって楽しかった。袴垂の登場場面がもっと多くてもいいけれど、子供向きの本で盗賊をかっこよく描くのは難しいのかも。2023/05/04
よこたん
44
“しずかに満開の桜をながめていると、たいそうおごそかな声がする。美しい声で桜の歌をうたっている。見まわしてもだれもいない。” 大好きな『きつねの橋』の続きが読めてとても嬉しい。仄暗い場所に潜む何か、目には見えないが確かにある気配、人ならぬものと共存していた時代がかつてあった。古木に宿る思いを汲み上げる人がいてくれてよかった。きつねの葉月と平貞道の信頼関係が微笑ましい。そして、ようやく渡辺綱登場。鬼の腕の件あたりから頼光四天王としての結束が深まっていくのだろう。佐竹美保さんの挿し絵でわくわくが倍増。2021/11/21
りー
37
祝シリーズ化!\(^^)/待っていましたの第2巻。渡辺綱と「鬼切安綱」のエピソード。兼家の五の君(後の道長)と倫子と出会いもファンタジーの中で美しく語られ、密かに明子との出会いも出てくるのかな?と思ってしまいました。桜舞う季節に読んで良かった。狐の葉月と(碓井)貞道の関係がとても微笑ましい。葉月が一途に主人を想う気持ちにきゅーんとします。兼家と兼通の牛飼童が争う場面も楽しかったし、どうやら晴明様ではないかとおぼしき人も一瞬登場。平安好きにはたまりません。はやく3巻出ないかしら。