内容説明
なぜいま、哲学で「人間」が大きな問題となっているのか?
本書では、「思弁的実在論」「加速主義」「新実在論」といった話題の現代哲学を解説しながら、その論点をわかりやすく整理。AIからゲノム編集・機械化による人体改造、そして気候危機に資本主義まで。私たちが直面しているテクノロジー時代の具体的な問題を踏まえ、現在起こっている「思想の地殻変動」を鮮やかに描き出す!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Sam
47
「ルネサンス以来、万物の尺度とされてきた『人間』が現代ではもはや中心的な役割を持たないだけでなく、その消滅までがテーマとなり始めている」という「ポスト・ヒューマニズム」の時代における哲学を論じた本。本書では人間を乗り越えようとする①「思弁的実在論」(メイヤスー)と②「加速主義」(ニック・ランド)、逆にヒューマニズムを固守せんとする③「新実在論」(マルクス・ガブリエル)を取り上げている。いまや哲学はテクノロジーはもちろん、資本主義や政治思想までも射程に入れなければ存在価値を持ち得ない時代になりつつある。2021/10/31
ta_chanko
20
現代はポスト・ヒューマニズムの時代。AIやバイオテクノロジーの発展により、ルネサンス以降のヒューマニズムの時代が新たな局面を迎えている。その中で、思弁的実在論・加速主義・新実在論という現代哲学が新たな潮流となっている。AI(スーパーインテリジェンス)に支配され、人間の尊厳や存在価値が失われるかもしれない。また、能力をアップデートして超人に進化する者が現れるかもしれない。あるいは、道徳的な社会の形成により人間の尊厳を維持していくことができるかもしれない。非常に難解だが、これからの時代の道標となる論考。2022/01/08
かんがく
10
科学技術が急速に発展する中で従来の人間観の基礎が崩れ始めている、そんな時代の哲学に関する概説。正直、思弁的実在論の説明は難しくてよくわからなかったが、ガブリエルについてはサルトルやハイデガーなど過去の哲学者との比較も多くあったため、以前読んだ著書の内容について理解が深まった。2022/04/07
またの名
9
どれか一つの立場だけ主張するのではなく、そのような偏狭さを捨て他の主張すべてを認めるガブリエルの実在論が「どんな議論も理解できてしまうガブリエルの知性の優秀さとも関係してるかも」と説明され、他の哲学者の知性レベルに思いを馳せる(遠い目)。ガブリエル自身はむしろニーチェそしてポスモダから発展した人間否定に対抗する論陣を張りヒューマンを擁護し、メイヤスーら人間主体抜きの実在論およびその果てにAIやバイオ技術によって人間種の消滅を期待する加速主義とは対照的。ジジェクなどの図式化が利用され参照しやすい明快な要約。2023/11/05
チェリ
9
2007年からコロナ時代までに生まれた哲学である思弁的実在論、加速主義、新実在主義をポストヒューマニズムを軸に解説。全部知らなかった私にとっては、十数年分の先進的な哲学をまとめて学べる内容であり、面白いに決まっていた。人間を中心に社会が動くという考えは当たり前に思えるが、前時代では宗教(神)を中心とした社会であったし、これからはまた違うナニカを中軸に据える社会に変容していく、つまりポストヒューマニズムの時代を迎える。SDGs、ブルシットジョブ論、ユヴァル・ノア・ハラリの著作にも通づる内容に成っている。2022/02/16