- ホーム
- > 電子書籍
- > 教養文庫・新書・選書
内容説明
モスクワからおびき出したナポレオン軍を迎え撃つパルチザン戦で、勇み突撃するペーチャ。そして敗走を重ねたフランス軍は、ついにロシアの地から一掃される。捕虜から解放されたピエールとナターシャの、再会したニコライとマリヤの、そして祖国ロシアの行く末は…。「試練の時を生き延びた主人公の内には、死んでいった複数の者たちの精神世界がそのまま息づいていて、彼とともに変わりゆく世界をみているかのようです」(訳者)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
molysk
74
ナポレオンとフランス軍は、ロシアの地を去った。捕らわれていたピエールは、解放されてナターシャと再会し、のちに結ばれて、物語は大団円を迎える。洗練されたフランスに立ち向かったのは、純朴で力強いロシアの民であった。異なる見方をすれば、ローマ文明とカトリックの影響を受けた合理的な西欧に対する、スラブ文化と正教の影響を受けた伝統的な東欧の反発、という解釈も可能であろう。祖国を愛するロシアの民は、ナポレオンを打ち払った。理由は異なっても、同じ構図の対立は、二度の世界大戦、冷戦、そして現在に至るまで繰り返されている。2022/04/03
ずっきん
71
だあー、目茶苦茶面白かった。あらゆるキャラは立ちまくり、翻弄され、足掻き、その姿から価値観まで変貌させていく様がつぶさに。すれ違う刹那に頬を撫でられ、その感触に相手の人生をも想わせる。いやもう、お見事。ボロジノの戦いあたりから挿し込まれる著者の考察というか主張は、それはそれですごく面白いんだけど、本人による解説書として別にまとめた方が物語の邪魔はしないんじゃね?晩年の作品はもっと洗練されてたよ?なんて野暮はいうまい。若い分、熱いぜトルストイ!てなもんである。躊躇してるアナタ、こいつはオススメの逸品ですぜ。2024/04/13
南北
65
ピエールとナターシャ、ニコライとマリアの2つの家庭を中心に語られていく。マリアを「マリー」(フランス語風)と呼ぶか「マーシャ」(ロシア語風の愛称)と呼ぶかで相手との距離感が変わってくるところは興味深い。著者自身が本作を「長編小説ではない」としているので、こういう言い方は不適切かもしれないが、エピローグの部分は登場人物たちの後日談以外は小説としては別な本にした方が良かったのではないかとも思う。訳も読みやすく「上唇」などの誤訳の訂正も評価できる。2021年の締めくくりに本書を読むことができて良かったと思う。2021/12/31
kazi
53
この破格のスケールを持った偉大な作品を前にして今さらどんな感想を書けばよいのか・・(^^; エピローグでトルストイが“歴史”に関して長広舌をふるう部分って昔から苦手なのよ~。戦争と平和は新潮社から出てる工藤先生訳で読んだ人がほとんどだと思うけど、この光文社・望月訳は一気に読み易くなったと感じました。専門家じゃないので細部の正確性とかはわからんが、体感的に言葉が若返って物語を追いやすくなった感じです。これからも、何回も、読み返すことになると思う。孫の、孫の、そのまた孫にまで残したい、素晴らしい作品。最高。2021/09/28
たかしくん。
33
かれこれ3年がかりで全6巻を読み終えました。最終巻は、ナポレオンのモスクワ撤退の追撃(パルチザン)に始まり、長い物語の終息に向かいます。クトゥーゾフの引退を持って、トルストイとしてはこの戦争は終わりとしてます。そして、残った登場人物たちの人間模様が再開し、ピエールとナターシャ、ニコライとマリアの2カップルが軸となって、2人の女性の思わせぶりな会話で本編が終了。後日談的なエピローグ1では、2組が描かれるが、ニコライが「アンナカレーニナ」のリョービンっぽくなり、ピエールはなんか聖人君主っぽくなっていて。(笑)2023/08/13