内容説明
技巧(クラフト)が芸術(アート)を可能にする
『ゲド戦記』『闇の左手』のアーシュラ・K・ル=グウィンによる小説家のための手引き書
「芸術には運もある。それから資質もある。それは自分の手では得られない。ただし技術なら学べるし、身につけられる。学べば自分の資質に合う技術が身につけられる。」(本書「はじめに」より)
ハイファンタジーの傑作『ゲド戦記』や両性具有の世界を描いたフェミニズムSF『闇の左手』などの名作を生み出し、文学史にその名を刻んだアーシュラ・K・ル=グウィン。
本書は、ル=グウィンが「自作の執筆に励んでいる人たち」に向けて、小説執筆の技巧(クラフト)を簡潔にまとめた手引書である。
音、リズム、文法、構文、品詞(特に動詞、副詞、形容詞)、視点など、ライティングの基本的なトピックを全10 章で分かりやすく解説。各章には、ジェイン・オースティンやヴァージニア・ウルフ、マーク・トウェイン、チャールズ・ディケンズなど偉大な作家が生み出した名文が〈実例〉として収録され、ル=グウィン自身がウィットに富んだ〈解説〉を加えている。また章末に収録されている〈練習問題〉を活用することで、物語のコツと様式について、自らの認識をはっきりと強固にすることが可能になる。
小説の執筆は、技芸(アート)であり、技巧(クラフト)でもあり、物作りでもある。執筆の楽しみを満喫することができる一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
くさてる
28
面白かった。海外作家による小説指南本は、言葉の壁から、どうしてもちょっと違う感が生まれてしまうものだけど、この本は丁寧な注釈と翻訳の良さで、そのずれを最小限のものにしていると思う。「視点と語りの声」の箇所など、文学的な技巧にため息が出るような思いになると同時に、読んでいてすごく面白いのだ。おすすめです。2021/11/06
塩崎ツトム
24
「ゲド戦記」のル・グインが語る、読ませる小説の書き方講座。日本語と英語との違いがあるため読みにくいが、巷にあふれる、「こうすればチョチョイと小説が書ける」的な、裏技的ハウツーをばっさばっさと切り捨てる様はよい。みんなもっと古典文学を読もう。2021/11/28
imagine
15
大変ためになる読書だった。文章表現の技巧を知ることで、筆は取らないまでも、文章の味わい方を詳しく知ることができた。今後の読書ライフが豊かになること受け合い!句読点や文の長さなど基本から始まり、人称や視点の切り替え(POV)といった高度技術までが順序よく講義される。ワークショップの見事な書籍化。そして、これだけの講義内容に加え、引用作品までもテーマに沿って訳した翻訳者さんのプロ根性よ!タイトルはもちろん、文法警察、ダマ、など、名訳が何度も。読書メーターのレビューにも、この読書体験を活かしたいと思った次第。2022/05/12
Mc6ρ助
14
物語を書く人達のための文章練習帳みたいなもんだから、単なるSF読みの爺様が一通り読んだだけでは何の意味もないが、書いた文章は必ず声に出して読め、というのは曲がりなりにも推敲するもののおかしな感想ばかりここにアップしている身としては耳が痛い。もっとも日本の居住環境、声に出して読めるところは少ないと思ってしまうのは避けがたく、在宅ワークはこの点でも難しさがあると余計なことまで考えてしまった。2021/10/02
roughfractus02
13
物語をどう作るかではなく世界を複雑で多次元で深みがある時空としてどう感じるかだ。読み進めながらそんな作者の声が聞こえてくる。小説創作がテーマの本書だが、キャラクター設定から入る物語論でも修辞分類から入る文体論でもなく、宇宙をカオスと捉え世界を海として体感するための指南書に思える。船の構造(文法)を学ぶことは必要だ。海図(プロット)は不要な時もあるが、動力(文のリズムや語り口のトーン)なしに船は物語の海へは漕ぎ出せない。そして、品詞や人称、5つの視点や複雑さによる時制の区別は、この海を渡る際の羅針盤となる。2024/01/29
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