内容説明
大学新卒就職市場で、まことしやかに語られる「体育会系は就活で有利」という神話。それはいつから成立し、どう変容して現在にいたるのか。そもそも、大学新卒就職市場で体育会系が本当に有利なのか。
まず、現在の体育会系学生のなかで、神話どおりの恩恵に浴しているのは誰なのかを明らかにする。体育会系学生への就職支援を展開する企業の協力のもとに調査をおこない、所属大学やスポーツによる差異、ジェンダー格差について統計的に検証する。
そのうえで、戦前・戦間期に最も売れたビジネス雑誌「実業之日本」の記事をたどりながら、明治末期から昭和初期までの間に大学スポーツへの社会的な評価が高まり、就職に有利にはたらくようになった起源と変容を掘り起こす。
さらに、1990年代に情報系躍進企業に就職し、営業として活躍した元企業アスリートの語りをもとに、揺るがない新卒採用の日本の特殊的慣行と凋落する企業スポーツとの関係のなかで現象していた体育会系就活や採用のリアルを克明に描写する。
企業の雇用実態、企業スポーツの盛衰、大学数の増加とスポーツ推薦枠、社会的・経済的な動向――。「体育会系神話」の実態とそれを成立させる構造のダイナミズムを明らかにして、大学スポーツのゆくえを提示する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Toska
18
著者自らが大学でサッカーに打ち込んだ体育会系としてのアイデンティティを持ちつつ、これに対する冷静な距離感と鋭い問題意識が高いレベルでバランスを保っている好著。詳細なデータの分析と具体的で活気にあふれたインタビューが上手く組み合わされている点も魅力である。「体育会系神話」はそれ自体で完結するわけではなく、所属大学の威信や競技の種類、性別、社会状況など様々な要素に左右される、極めて文脈依存的なものであるという単純だが重要な結論。2024/09/04
ぷほは
8
文武両道を実現した神話の体現者は旧帝大クラスの伝統もしくは人気スポーツクラブの役職持ちであり、マイナースポーツもしくは二軍以下の中堅大学は「有用な身体」とは見なされない。ただし、かつてのアメフトや今のラクロスのように新興スポーツは勧誘から戦術形成まで主体性を持つ学生が多い見込みが高く、人事が好む傾向がある。実業団チームが廃れた後の受け皿として大学クラブは拡大したが、少子化のため学費確保に動くため練習場所や学生の継続的ケアという発想はなかった。指導者かつ教員という立場から現状を厳しく認識する問題意識は明確。2024/05/05
つかず8
4
久々の紙の本。とても面白かった。体育会系は就活に強いという通説について、スポーツや就活の歴史を紐解き、現在の流れまでを包括的かつ論理的にまとめている良書。体育会神話が出来上がったのは近代日本で、当時人口の0.1%の旧帝大+体育会というスーパーエリートが明らかなエリート採用として就職するという事から体育会神話が始まった。当時の体育会のイメージとして体が健康で頭も悪くない(良すぎない)ことを起点として、現在の打たれ強い、指示に忠実、和を乱さないというイメージの基になっている。2025/08/17
たろーたん
4
体育会系神話はある程度本当である。本書曰く、剣道・アメフト・サッカー・ラグビー・ラクロス・野球などの伝統スポーツは東証一部上場企業就職において有意だったらしい。しかし、ここで面白いと思ったのは「体育会系で心身が鍛えられているから就職しやすい」のではなく、その内実は「OB・OGがすでに就職していて、リクルーターとなってくれるから就職しやすい」という仮説が一番妥当性が高いことだ。故に、応援団・陸上・柔道・ゴルフなどは同じ体育会系だが有意ではなかった。この部分が最も体育会系就職神話を破壊している部分だと思う。続2021/12/02
Cophie
3
マツコの「体育会系社員は30代で終わる」説を深掘りしたくて読んだが、調査対象期間が2013-14年のため、自分の就活を思い出しながら読んだ。就活で所謂"勝ち組"となりやすいスポーツは大いに同意、R社社員インタビューも非常に興味深かった。P199の統計は分かりやすいし、体育会系人口の増大とそのカラクリは知らなかった。論文なので統計など少し読みにくい箇所もあるが、内容は非常に面白かった。2023/07/29
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