内容説明
ロンドン下町出身の優柔不断な中年男・アーチーと、バングラデシュ出身の誇り高きムスリム・サマード。第二次大戦で親友になったふたりは、ロンドンで新たな人生を模索する。
移民家族が直面する悲喜劇を知的でユーモラスに描く、ジャマイカ系イギリス人作家の衝撃作。カリブ海やインド亜大陸からヨーロッパにわたる壮大な家族の物語を背景に、歴史、信条、遺伝子などさまざまな差異を抱えて混沌の街ロンドンで生きる人々を描く。分断と混沌の深まる時代に希望の光を放つ、21世紀の必読書。全2巻
ブレイディみかこさん推薦!
「この本、いちおう社会派で、すでに古典と呼ばれているんです。
こんなにヤバくて笑えてぶっ飛んでるのに。
繚乱と咲く、移民たちのサーガ! ストリートの歴史はなんと猥雑でカオスなことか。
多文化共生の諸問題をごった煮にしておおらかに笑い飛ばす、才気煥発な本である。」
西加奈子さん推薦!
「これはすべての呪われた、そして祝福された人間の物語だ。
きっと100年後も、200年後も読み継がれるだろう。
人間がどうしようもなく、抗い難く、救い難く、人間でしかないことを、こんなに面白おかしく、鮮やかに、完璧に書かれた小説がこの世界に存在することに感謝したい。
20年前に誕生したこの傑作を、これから初めて読むことが出来る人に嫉妬する。そう思っていたけれど、何度目だって衝撃は変わらなかった。いや、増した。著者が描いたこの世界に、私たちは近づけているのだろうか。」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かんやん
29
21世紀のディケンズ、24歳のデビュー作。ケンブリッジ在学中、出版社で争奪戦が起こったとか。戦時中に友情を結んだ英国人アーチーとバングラデシュ移民サマード、冴えない二人の結婚生活と、次の世代を描く。なんだか方向性がよくわからないドタバタ喜劇のようで、ポンポンと軽快に言葉が飛び出してくるのは、長編小説よりも、シットコムに相応しいような。人種ネタ、宗教ネタ、下ネタが多いしね。ジョン・アーヴィング(ディケンズ好き)の影響を感じるけど、感傷を排しあくまでドライなのは、おっさん達を滑稽視してるから。2025/01/04
キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
22
イギリスの二つの家族。ぱっとしない市民だがあまりの一生懸命さに、生きていたらそれでOKというしぶとさや気楽さを感じる。下巻へごー!2024/01/31
タイコウチ
7
才気あふれる傑作とはこういうものか。原著は著者24歳のデビュー作で2000年発表。ロンドン生まれの白人アーチーとバングラディシュ出身のムスリムであるサマードの半世紀にわたる友情とその家族たちをめぐる大河小説(アーチーの妻はジャマイカ出身移民で元エホバの証人、サマードの妻は同じバングラディシュ出身、それぞれ親子ほどの年下婚、そして前者には娘1人、後者には息子2人が生まれる)。人種、宗教、文化、階級、ジェンダー、世代などさまざまな要素が複雑に絡みあい対立しあう現代の英国社会の混沌がユーモアで彩られ活写される。2021/08/22
しゅー
5
★★おお、今どき珍しい「神の視点」での語り。これぞストロング▪スタイルの「小説」だ!とテンションが上がってしまった。今どきと書いたものの、書かれた年代はそんなに新しくないのね。英国で暮らす移民たちのドタバタ劇。途中から井上ひさしの作品も連想してしまった。後半が少し下世話な感じになってきて、ちょっと飽きてきた。下巻、どうしようかな。2021/08/24
まこ
4
普通に差別丸出し、スラングなセリフが飛び交い、主役コンビ筆頭にこの時代では当たり前のことなんだ。それがユーモアとなりムカつきがない。アーチーパートの人種を超えた助け合いと些細なことで立場が変わること。サマードと子どもたちは、元の文化が違っていて移民の苦労が感じられるが。息子にムスリムを押し付けるのは後々良くないことが起きそう。つか、もう起きてないか。2024/07/10