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内容説明
大手出版社を早期退職した漫画編集者の塩澤。理想の漫画誌を作るため、自分が信じる漫画家たちを訪ね、執筆を依頼する。漫画を描く者、描かぬ者、描けぬ者、東京の空の下、それぞれの人生が交差する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
吉田あや
70
30年務めた漫画編集の仕事を主人公・塩澤が退職するところから始まる新しい松本大洋ワールド。静かに、静かに、何かが沈殿するように重たく暗く、熱い想いが真っ黒に焦げ付くようで、その分厚い静けさに圧倒される。描く者、それを導く者、角度違いの漫画への情熱や物語を創るという狂気の世界を垣間見ることができる。擦り切れてしまい作品が空っぽになってしまった作家、情熱が空回りする乱暴で臆病な作家、長年創作の現場から離れていた作家、それぞれの事情や想いが新たに走り出す。2021/09/29
キク
64
素晴らしい作品を創作する作家を「天才だ」でまとめてしまうのは、安易なラベリングで逆に失礼じゃないかと思っている。思ってはいるんだけど、、、どうしても「松本大洋は天才だ」と思ってしまう。その松本大洋が、マンガ出版業界を舞台に中年マンガ編集者と、かつて天才と言われた漫画家達が新しい雑誌を創刊しようとする物語を描いている。当然、素晴らしい作品になっている。不器用だけど誠実にマンガに向き合う中年編集者が、なんか「ピンポン」のスマイルが社会にでた姿に思えてきて、すごく感情移入してしまう。大人に響くマンガでした。2022/01/21
天の川
52
新作が読めて嬉しい。立ち上げた雑誌の失敗に責任を感じて退職した漫画編集者。自分の描きたい作品と世間の受けのはざまで苦しみ、新たな作品を生み出すのに七転八倒する漫画家たち。文鳥と会話し、こよなく愛する漫画本に埋もれて生きる塩澤さんは、彼ら個性豊かな漫画家達と真っ直ぐに誠実に向き合う。自分の納得のいく雑誌を作ろうと考える塩澤さんが依頼する漫画家達は挫折感にまみれた人々・・・彼らの物語がこれから始まる。本当に楽しみだ。2021/09/07
Tenouji
42
2022年のGW終盤に相応しい内容だった。理想主義とは『ナンバー吾』で決別したと思っていたのだが…やはり、そういうことなのか、と思う次第。「Man shall not live by bread alone.」2022/05/07
ぐうぐう
35
読んでいて、寺田ヒロオと森安なおや、二人の漫画家のことがなぜか思い出された。漫画界に絶望し筆を置いた寺田と、再起を願い描き続けたが叶えられなかった森安。トキワ荘の住人だった二人の漫画家の、その対照的な生き様は、しかし自らの作風を頑なに守ったという点で共通している。『東京ヒゴロ』の主人公は、元編集者だ。編集者の目線から漫画を、漫画家を、漫画界を描こうとしている。ここには、漫画界の本流から外れた漫画家達が登場する。(つづく)2021/09/05