内容説明
仕事に行き詰まっていたホラー作家の津久田舞々は、担当編集者の勧めで、駅前に自販機すらない過疎の町・古賀音を訪れた。そして町長直々に、この町のことを書き残してほしいと依頼を受ける。なぜわざわざホラー作家に頼むのか訊ねたところ、町長はこう答えた――ホラーを書いていらっしゃる方でしたら、そういう方面の耐性がおありだと思いまして。到着したその日から立て続く怪奇現象、次々姿を現す妖との共同生活、かつて古賀音に財をもたらした奇人の遺した謎。気弱な怪奇小説家が目にする、田舎町に秘められた想像を絶する「真実」とは? 稀代の物語作家が贈る、世にも不思議なジェントル・ゴースト・ストーリー!/解説=似鳥鶏 ※単行本『優しい幽霊たちの遁走曲』の改題・文庫版を底本としました。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sin
60
ホラーなのだろうか?『ダンウィッチの怪』のオマージュ作品である菊地秀行『妖戦地帯』に登場する邪神のような旧き神の顕現からはクトゥルフ神話を連想させるが、これは本邦のダークファンタシーだと思うのだがどうだろう?人生に見放されて怪異に翻弄される頼りない主人公…その作風は夢と生真面目から離れられない崖っぷちの作家…彼の行き当たりばったりの行動が怪異を招き、その怪異が怪異に繋がっていく…何事にも受け身で後向きな彼は果たして旧き神の復活を防ぐことが出来るのだろうか!?2024/03/08
とろこ
54
読み始めて、主人公の独特な名前に見覚えがあると気付いた。もう少し読み進めて、登場してくる他のキャラの記憶もうっすらと蘇った。こ、これは…。『優しい幽霊たちの遁走曲(フーガ)』の文庫化改題版ではないですか!と途中で気付いたけれど、ラストを忘れていたので最後まで読んだ。ホラーなのに怖くない。むしろ、個人的にはドタバタ喜劇・ユーモア小説として読めた。主人公の性格や小説の構造も読み手によって好き嫌いが分かれるタイプかと思う。ガチガチのホラーではないので、ホラーが苦手な人でも読めると思う。2022/01/25
ワッピー
31
そろそろ限界の見えてきたホラー作家・津久田舞々は、地方の町に移り住み、そこを舞台とした作品を書くという胡散臭い依頼を引き受けてしまう。町のかつての名士・片喰鐵山邸に住み込んだ初日からやることなすことツボにはまって、小気味いいほどに妖しげなものを引き寄せていく津久田に、依頼主の町長は怒るどころか、機嫌上々。津久田を翻弄するモノたちの正体は?そして地底に封じ込められた恐ろしき存在とは?悪夢がつなぐ土俗と禁術の 目眩く時空迷宮とメタな展開にクラクラしながら読み終えました。宿少シリーズから20年ぶりの再会でした。2024/05/24
みやび
27
「奇談蒐集家」が好きだったので、あの感じを求めて手に取ったらやっぱりこちらも面白くて好きな世界だった。最初はどこか不気味で読み進めるのが怖く感じたけれど、封印から解き放たれて次々登場する怪異達のキャラが個性的でコミカルなので、途中からは楽しみながら読めた。ホラーのようでありながらもちゃんとミステリー要素もあるし、新しさは無いものの活字ならではの工夫もあり。どこか奇妙な世界を彷徨ううちに「奇談蒐集家」と関係する部分も少し出て来て嬉しくなったり。個人的にいろんな楽しみ方出来て面白かった。2025/01/30
くろねこ
21
出だしの駅の描写がじわじわと不吉さを誘ってとても好みな始まり。。 ただ読み進めると、各章で主人公が封印から解き放つのはユーモラスな怪異たちで思ってたホラーではなかったのだけど…でも不思議な民話のようで良かった。。2022/07/04