内容説明
あなたの身近にもきっといる「隣人」の体験
6歳で来日し、言葉や習慣、制度の壁など数々の逆境の下でも、周囲の援助と家族の絆に支えられ生きてきたイラン人少女の奮闘と成長。
移民社会化する日本で、異文化ルーツの子どもたちが直面するリアルを等身大で語った、笑いと感動の手記。
星野智幸さん(作家)絶賛!!
第67回 産経児童出版文化賞・ニッポン放送賞受賞作
【著者】
ナディ
1984 年イラン生まれ。91年に出稼ぎ労働目的の両親とともに家族で来日。現在は2児の母。
目次
1章 外国に行くってどういうこと?
2章 想定外!な日本の暮らし
3章 うれしい、楽しい、でも困った学校生活
4章 日本で胸をはって暮らしたい!
5章 私はイラン人? 日本人?
6章 私はここにいます
解説 山口元一
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
114
イランからやってきた、ひとりの少女の回想から始まる。外国の人々への、ふだんの目線を大いに反省したくなる。やむにやまれぬ事情もあるのだ。外国人労働者の話は頻繁にニュースにされるが、建前と本音の間でゆれる日本の時代背景に、ナディさんの家族も周囲の人々も翻弄される。ユニークなのは、そんな問題と絡みあって、彼女の成長と日本で送った青春時代の経験が語られていること。言葉の問題、就学、文化の違う学校生活、宗教、心の動きなど、本人が書かなければ、おそらく知られることのない物語である。多くの人にぜひ読んでほしいと思った。2020/11/22
☆よいこ
79
イランから家族で日本に出稼ぎにきたナディ。両親は工場で働き、6歳のナディは5歳と1歳の弟の面倒を見て暮らし始めた。不法移民であることから健康保険に入れず病院にかかることを諦めたり、差別を感じたり大変な暮らしだった。だけど子供らしい順応性とものすごい努力で、学校で勉強し進学し就職して今は幸せに暮らしている。自分が何人なのか、アイデンティティで悩むことは多いが、自分なりの答えを見つける。▽「ガイジン」と一区切りに言うことはできない時代になっているよね。教育は大事。▽全ふりがな付き。読みやすい。2020/06/23
カレイ.シュウ
60
イラン生まれの日本育ち、中身はほぼ日本人の筆者の経験がユーモラスにわかりやすく書かれています。日本に家族で出稼ぎに来て不法残留状態だったが、本人達の努力と回りの人たちの助けで、学校に通い日本に定着していきます。異文化コミュニケーションの面白さも秀逸。ふりがなもふってあり小学生高学年以上向けかな?中学生の娘向けに購入しようかな。2020/07/08
ぶんこ
60
小さな子どもを3人も連れて、異国の地で夜遅くまで働き続けたお母さんが凄い。戦前のブラジルやハワイ移民の方々のご苦労が頭に浮かびました。自分の祖国がどこかと悩むナディさんと、同じような境遇の多くの人たちを思う。怪我や病気になっても治療を受けるのを躊躇してしまう人々。そういう人々が「ほんとうにありがとうございました。私はこれからも、日本でがんばって生きて、かならず恩返しをしていきます。」と入管の人に伝えたところでは胸が詰まってしまいました。2019/09/24
ルピナスさん
57
我が家は希望して外国で都度ビザを取得し、その国に滞在していたが、コロナ禍のように経済情勢が悪化するとあからさまに雇用は国民優先になり、高所得の外国人は冷たい目に晒されることになり不安だった。本書の著者ナディさんの場合は、悪化する国内情勢から逃れる形での日本不法滞在。私が住んできたどこの国でも、移民1世の両親は言葉にも苦労し朝晩働き詰めで、子供に教育を施すという例を見てきたが、家族の大きな流れと事情の決断の中で決めた「ふるさと」について、外見で壁を作らず互いに認めあい、尊重する気持ちを忘れないでいたい。2022/02/04