交差する辺野古 - 問いおなおされる自治

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交差する辺野古 - 問いおなおされる自治

  • 著者名:熊本博之
  • 価格 ¥3,960(本体¥3,600)
  • 勁草書房(2021/08発売)
  • ポイント 36pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784326654277

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内容説明

辺野古の人々を20余年にわたって翻弄してきた普天間基地移設問題。辺野古区民、建設反対運動、そして日本政府が交差する中で、なぜ辺野古は生活環境悪化につながる「条件付き受け入れ容認」の立場をとることになったのか。辺野古区民の経験を通し、普天間基地移設問題は日本のどこでも起こりうる、普遍的な社会問題であることを描き出す。

目次

序 章 辺野古から普天間基地移設問題を捉える
 第1節 本書の目的と問いの意義
 第2節 調査手法
 第3節 本書の構成
 第4節 建設される基地の呼称について

第I部 普天間基地移設問題の経緯

第1章 問題の発端─普天間基地返還合意から一九九八年名護市長選挙まで
 第1節 普天間基地返還合意
 第2節 名護市民投票
 第3節 比嘉名護市長による受け入れ表明と辞任
 第4節 一九九八年名護市長選挙

第2章 移設計画の進展─沖合案からV字型案へ
 第1節 名護市の条件つき受け入れ表明
 第2節 沖合案での合意
 第3節 建設反対運動による抵抗
 第4節 普天間代替施設建設案の確定

第3章 政権交代がもたらした期待と諦念
 第1節 政府の強硬姿勢と沖縄の抵抗
 第2節 民主党政権の誕生と迷走
 第3節 反対派市長の誕生と辺野古の「条件つき容認」

第4章 再びの自公政権による建設作業の強行
 第1節 仲井眞知事による埋め立て承認
 第2節 翁長知事の誕生と冷遇される沖縄
 第3節 埋め立て承認をめぐる政府との争訟
 第4節 容認派市長の誕生と翁長知事の死
 第5節 示される反対の民意と止まらない建設工事
 第6節 終わりの見えない普天間基地移設問題
 第7節 四半世紀の意味─第I部のまとめ

第II部 辺野古にとっての普天間基地移設問題

第5章 シュワブと辺野古
 第1節 シュワブ建設前の辺野古
 第2節 シュワブ受け入れの経緯
 第3節 シュワブ建設後の辺野古

第6章 条件つき受け入れ容認の意味
 第1節 移設先に選ばれた頃の辺野古
 第2節 受け入れを前提とした条件交渉へ
 第3節 容認決議と条件交渉
 第4節 辺野古の地位の相対的な低下
 第5節 条件つき受け入れ容認の内在的な要因

第7章 反対派住民の苦悩
 第1節 「命を守る会」代表としての活動
 第2節 反基地運動組織への違和感
 第3節 再びの代表への就任
 第4節 区行政の民主化に向けて
 第5節 運動は終わらない

第III部 自治をめぐる争い──辺野古で交差する住民、反対運動、日本政府

第8章 辺野古集落と建設反対運動──対立を超えるために
 第1節 辺野古に流れる三つの時間
 第2節 辺野古区民にとっての「政治の時間」と「運動の時間」
 第3節 ある容認派住民の見解
 第4節 建設反対運動との対立
 第5節 「生活の時間」を不可視化させているもの
 第6節 「生活の時間」の可視化と共有がもたらす「政治の時間」への抗い

第9章 運動の論理、辺野古の論理
 第1節 ルーマンのリスク論
 第2節 リスク論の観点からみた普天間基地移設問題
 第3節 「被影響者」としての辺野古区民─辺野古が「反対」するために

第10章 補完性原理の濫用と振興事業の報奨金化がもたらす地方自治の危機
 第1節 「国防は国の専管事項」論理の批判的検討
 第2節 報奨金化する振興事業
 第3節 沖縄における自治のゆくえ

終 章 普天間基地移設問題を終わらせるために
 第1節 得られた知見
 第2節 それぞれに求められるもの

あとがき
参考文献
索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

翔亀

39
【沖縄40】辺野古は他人事だと思っていた。いやそう思うしかなかった。日米安保に関わる余りにも大きすぎる問題だからだ。本書はそうした気分に流されてはいけないことを静かに訴える渾身の作だ。ぜひ多くの人に読んでほしいと思う。第47回藤田賞受賞作(地方自治関連書に贈られる)、辺野古のまさしく現在を理解することができる。著者は20年間にわたって辺野古に通い続けた社会学者。辺野古の住民のフィールドワークをしてきたという点がポイントだ。本書はその20年間の成果だ。■まず、辺野古問題の2021年に至る20年以上の歴史↓2021/12/20

二人娘の父

10
市長選まっただ中の名護市のホテルで、仕事終わりに読み進め、今朝読了。素晴らしい研究と調査がまとめられたと思う。これからの辺野古、沖縄の米軍基地に関わる課題、ひいては日本の防衛と住民自治について考える上での、要となる著作であると感じた。2022/01/20

歴史好き

4
あるようでなかった沖縄研究、本書を一言で表すならばそのような表現になるだろうか。本書は、辺野古区民に焦点を当てて基地問題を論じることで、沖縄が基地に取り込まれるばかりではなく基地を取り込む側面もあることを指摘する点で興味深い。その筆致は、たしかに複数の主体が交差し、一筋縄ではいかない重なりとなった辺野古の様子を描くことに成功している。2021/09/07

ぐり

2
前段で辺野古移設について、この20年近くの国と県、自治体の行政手続きの往復をまとめる。時系列を追って読んでいると「撤回の取り消し」なんてややこしい話も理解できる。 後段は、辺野古地元住民とその周辺で反対運動をする市民団体について。長年反対したが結局作るんでしょの境地から、補償を前提とする「条件付き容認」となった地元。この心の揺れを丁寧に取材している。 この揺れについては国の発表に寄りがちな本土マスコミにもよく知られてほしい。賛成にもいろんな階層があることを知らずに、また、知らせずにいるのは罪だ。2021/11/26

Y_Kuroyanagi

0
20211018ー202110302021/10/30

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