文春文庫<br> 太陽と毒ぐも

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文春文庫
太陽と毒ぐも

  • 著者名:角田光代【著】
  • 価格 ¥850(本体¥773)
  • 文藝春秋(2021/07発売)
  • ポイント 7pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784167917227

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内容説明

「角田光代の隠れた傑作」といわれる、
不完全な恋人たちの、キュートでちょっと毒のある11のラブストーリー。


リョウちゃんは、あたしのたいせつな恋人は、
あたしの前で口を開いた洞窟なのだ。
そうしてあたしは未だその入り口で立ちすくみ、
その一番奥に何があるのか見極めるための
一歩を踏み出せないでいる。
  ──「お買いもの」より

ハッピーエンドから始まる恋人たちの幸せな日常。
どこにでもいるようで、でもちょっとクセのある11組の恋人たち。
買い物依存症、風呂嫌い、万引き常習犯、迷信好き……。
この恋愛短篇集は、極端な恋人たちを描きながらも、
いつしか、読む者の心の奥に眠らせていた記憶を呼び覚ます。
文句なしの面白さと怖さに震える、長年偏愛されてきた傑作です。

「だが、だからこそ、物語が進むにつれて、そのおかしさが物悲しさへと変わっていく。
どうして、この人は、このままで許してもらえないのだろう。
どうして、最初は許されていたものが、許されなくなってしまうんだろう。(中略)
相手の中の「どうしても許せない部分」が、自分の過去、コンプレックス、傷、そしてそれらに飲み込まれずに生き続けるためにまとってきたたくさんの鎧と関係していることに気づいていくのだ。
作中で「裸んぼで暮らせたら問題なかったんだろうな」という言葉が出てくるが、この物語たちは、裸んぼではいられない、過去を、痛みを、コンプレックスを、すがるものを切り離せずに着膨れながら生きていくしかない人間のかなしみを見つめた作品なのだ」(解説より 芦沢央)

※この電子書籍は2007年6月に文藝春秋より刊行された文庫の新装版を底本としています。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

さてさて

153
11組の恋人たちの関係性の中に芽生えた『違和感』に光を当てていくこの作品。そこには、付き合いはじめた時には見えなかった相手の隠された姿が、もしくは付き合いはじめた時には意識が低かった事ごとが、二人の関係性を維持していく中で大きな『違和感』となっていく様が丁寧に描かれていました。二人の関係性の中に見え隠れする『太陽』と『毒ぐも』のせめぎ合いの絶妙さを見るこの作品。人と人とが長く付き合うことの意味を感じもするこの作品。角田光代さんならではの着眼点の面白さに、改めて作品作りの上手さを垣間見た、そんな作品でした。2023/09/19

aoringo

90
傍からみたら普通のカップル。でも相手は盗癖だったり、アル中だったり、一癖持っていた人達だった。お風呂に入らないから臭い、食事がお菓子だけとかはきついなと思うけど、もし付き合う前に分かっていたら恋人になっていただろうか。恋愛初期だったら気にならないかも知れない、でもこれはそれから数年後の話。相手に苛立ちながらも中々別れない登場人物に読んでいて付き合うって何だろうと考えてしまった。2023/09/11

misa*

70
恋人同士の生活の中での出来事を綴ってるんだけど、最初はおもしろく感じてた相手のある部分が、時として怒りや悲しみに変化してゆく。恋愛してく中で一度は経験するだろうお互いの違いが、くっきりと形をあらわにしていく様は、角田さんならではの描写で書かれていてスラスラと読めちゃう。昔自分も恋人の許せない言動だったり癖があって、どんなに好きでいてもその一部分を見る度に音を立てて歪みが生まれていた。結局は一番嫌いな人になって別れた。そういうヒリヒリした作品が集まった短編だった。2021/07/27

64
角田さんの恋愛小説はリアルで、飾りがなくて、心の奥底の痛いところをグイグイ突いてくる。本作品もそんな一冊だった。どこにでもいるような11組のカップルのお話。付き合い始めた当初は気にならなかった相手のある部分が、時を重ねるごとにどうしても許せなくなっていく。自分だったらどれが一番無理かな・・なんて考えながら読んだ。どれも甲乙つけがたい(笑)2004年の作品だけれど、全く古さは感じなかった。2021/08/30

みつにゃん

51
11組のカップルの姿の話。どちらかが『極端な人』。お風呂に入らない、万引き常習犯、買い物依存症…etc 好きだけれども、どうしても許せない部分があり、その許せなくなる側の葛藤に共感する。一緒に住むとどうしても出てくる部分。わかりやすすぎて既視感…の箇所あり。本文の中で2人の関係をドレッシングみたいだと例える部分がある。油と酢のようにくっきり独立した両者には、それ相応の気負いと行為が要る。かき混ぜ、譲歩も変更も楽しかったけど、放置すればすぐに分離する。…表現が秀逸。みんなあるよね…とどこかホッとして読了。2021/07/25

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