内容説明
2020年、日常が一変したコロナの夏。俺たちは次の公演『4回転サイタマ』の準備を始めた。世間からは“不要不急”“要警戒三密指定生物”として避けられ疎まれ、“自粛”を要請されながらも、たった一度きりの今しかないこの瞬間に、青春のすべてを注ぎ込む。はたして舞台の幕は上がるのか――。劇団脚本係の“俺”と主演女優“サリエロ”の一夏を描く、笑いあり涙ありのウィズ・コロナ青春小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よっち
33
2020年、日常が一変したコロナの夏。次の公演『4回転サイタマ』の準備を始めた劇団脚本係の潮見康介と仲間たち。たった一度きりの今しかないこの瞬間に、全てを注ぎ込む青春小説。非常事態宣言明けに不安を抱えながら、公演の準備を進める年齢も職業もバラバラの劇団員たち。対策はこれでいいのかと垣間見える不安が今読むとわりと生々しくて、二度とない夏に向き合う劇団員それぞれの複雑な思いがあって、コロナ禍では実際にこういうこともあったんだろうな…と思ったそのほろ苦い結末もまた、忘れられない思い出になっていくんでしょうね…。2021/08/01
ソラ
12
小説世界にはコロナを持ち込まないというスタンスが多い中珍しくコロナ後の日常を描いた小説。 安易にハッピーエンドじゃないところが真に迫ってた。2021/10/31
huraki
12
日常を一変させたコロナウイルス。取り巻く情勢や環境が変化する中で、主人公たちの活動する小劇団も苦境に立たされていた。それでも、次の舞台こそはきっと。緊急事態宣言が解除され、彼らの新たな夏が幕を開ける。大学卒業後、演劇から離れる大学生。講義がリモートになり、キャンパスライフを過ごせない新入生たち。様々な人が葛藤を抱える中で、青春のすべてを演劇に捧げてきたメンバーたちの、並々ならぬ情熱や思いに胸を打たれる。当たり前だと思っていたいつもの日常が、一日でも早く戻ってくることを願わずにはいられない。2021/07/25
JUN
3
みんな辛かったんだ2023/08/31
遊季
2
コロナもの。新型コロナウイルスが蔓延する中、大学生で演劇をやっている主人公による不要不急の物語。現代の若者をコロナ禍という視点で切り取って描かれたこの作品は、どことなく妙なリアルさがあった。結局のところいろいろとダメになってしまうこの話は、正直物語としては不完全燃焼なところがあり、読後に妙なモヤモヤが残る。しかしこの不完全燃焼さこそが、あらゆるものが自粛によって制限されたコロナ禍そのものであり、物語という媒体によってコロナ禍の感情を表現したこの作品は、紛れもないコロナ文学であると感じました。2022/09/22