内容説明
家庭で居場所を失ったキャリアウーマンが年下の男と出会って……。意外な成り行きに大人の孤独がにじむ表題作の他、未体験の快感と美容効果を保証する、謎の無脊椎動物が巻き起こす騒動を描く「ヒーラー」、借金まみれのカメラマンが山奥で雌犬の“ヒモ”となる「クラウディア」など。濃厚な物語世界に、動物たちの凜々しさや人間の愚かさを凝縮した絶品の五篇。『となりのセレブたち』改題。(解説・田中兆子)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みも
127
①トマトマジック48頁②表題作64頁③ヒーラー66頁④人格再編50頁⑤クラウディア101頁の5篇。なかなかシュールな短編集だが、いずれも著者の発想力と力量が発揮されている。③と④に至ってはパラレルワールドか近未来かという世界観で、読者は逞しい想像力が求められる。僕個人としては⑤が良かった。クラウディアとは飼い犬の名前だが、この犬の変貌していく様が恐ろしくもあり、また、ミステリー的要素も含めてストーリーの着地点が予想出来ず、読後は虚脱感のような不可解な感慨を抱いた。全体的には好悪が分かれる作品群と言えそう。2025/05/09
チアモン
52
ぞくりとくる話が多かった短編集。「ヒーラー」がとてもリアルでパンチが効いて強烈でした。短編なのにそれぞれ長編を読んだ感がありとてもお得でした。人々の心の闇を描くのがとても上手な作家さん。また体調のいい時に読んでみたい。篠田さんクセになりそう。2020/01/29
りつこ
38
久しぶりに読んだ篠田節子。ぞわぞわとくる話が多くて、こういう作風だったっけ?とちょっと戸惑ったのだが、そういえばあんまり短篇は読んだことがなかったかもしれない。表題作、私には相当痛い。「ヒーラー」「人格再編」もリアルだ。近い未来、ほんとにこういうことが起きても不思議じゃない。こういう方向に流れそうな今の日本…私たち…。「クラウディア」はここにおさめられているなかでは一番ぶっとんでた印象。面白かった。2019/04/02
くろにゃんこ
38
どんな展開になるか予想もつかない短編、これは絶品!もっと読みたいと思いました。読んだことがあるのもあったけど…と返却する際に裏表紙を見たら『となりのセレブの改題』だって。全部読んだことがあったのか(*_*)2019/02/21
エドワード
30
この国と人々の行く末を見つめる篠田さんの冷静な眼差し。「静かな黄昏の国」に似た、近未来の日本の予想図が見事である。日本は発展途上国ではない。しかし半世紀前は高度成長期だった故に、勤勉で、アグレッシブな価値観を肯定しつつ、かたや停滞する社会を生きる<あせらずのんびりマインド>を称揚する矛盾を描く「ヒーラー」「人格再編」のリアルさに冷汗。どっぷり今の日本での、友人や家族の間の感情のもつれを描く「トマトマジック」「蒼猫のいる家」も実に痛い所を突くね。「クラウディア」は忠実な犬を描いて、さて人間は?と問いかける。2019/04/17