内容説明
大変動により北半球がほぼ全滅し、海洋の3割は毒と化した。外界の環境から切り離された閉鎖循環型の巨大建造物である、ノースポール合衆国自治州“マグナ・キヴィタス”では2億近い人類と、その隣人として造られた数千万のアンドロイドが暮らしていた。老境にさしかかり人生に倦んだオルサレン氏に孫が預けたのは、保証期間も切れた調子外れのアンドロイドで……(「ジナイーダ」)。そのアンドロイドが助けたのは、事故により240キロの徒歩の旅を余儀なくされた男だった。人間の死を見過ごしてはならないとプログラムされたアンドロイドは男を助けようとするが……(「ピクニック」)。荒廃した未来を舞台に、ヒトとは何か、「あい」とは何かを問うSF短編集。
目次
ジナイーダ
ピクニック
マーダーケース
エピタフ
ジナイーダ reprise
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カナン
58
拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。さて、滅びの季節を見事生き残った超超超ラッキーなキヴィタスの皆様、そろそろこの世界の絡繰にも失望し始めた頃でしょうか。ファッキュー、天候管理型AIによって偽りの日光を享受し濫費する全ての生きとし生ける皆様へ、情動領域のメモリと人格バックアップと引換に、今はただ貴方方が健やかに生きた後、この惨く醜くもいとおしい地獄に落ちてくるオワリとサイゴをココロよりお待ちしております。敬具 近く遠い貴方方の隣人より 普くAIしAIされるために存在する遠くとも近い貴方方へ2021/05/26
よっち
42
大変動で北半球がほぼ全滅し、海洋の3割は毒と化した世界。2億近い人類とその隣人として造られた数千万のアンドロイドが暮らすマグナ・キヴィタスを舞台とした「あい」を問うSF短編集。人生に倦んだ祖父に孫が預けた保証期間も切れた調子外れのアンドロイド、アンドロイドが助けた事故で240キロ徒歩の旅を余儀なくされた男など、アンドロイドが当たり前にある世界で、人の醜さを突きつけられる展開にはいろいろ考えさせられましたけど、前作にも登場していたキーマン二人の再登場からいろいろ繋がってゆくその結末はなかなか印象的でしたね。2021/06/30
まふぃん
22
前作あるのを知らずにこちらを読んでしまった…。久しぶりSFなので、とっかかりにくかったけど、短編なので、何とか読めました。世界観がしっかりあるのは、前作があるから? これは、前作読まなくちゃ!2022/12/23
あっこっこ
14
今作は前作の世界観を引き継ぐ短編集ということでしたが、よりこの世界の細かい設定を理解し味わえるものでした。見慣れた名前からちらほら出てくる、、ついニンマリしながら相関関係を頭の中で構築し、推測しながら読み進めました。結論、よかった!2021/07/08
ベル
11
命、感情、人、アンドロイド、AH、すべてあい。 人間があまりに命や肉体に合理的過ぎて寂しく感じた反面、人でない個体の持つ作られた情動領域からの感情は人間のそのもので、とても愛しかったです。まぁ結局人間も、どうしたってあいなんだけど。それぞれのあいのかたち、タイトル通りでした。 あの2人に会えて嬉しい。あの2人を愛してるから、「死」がなくても2人にずっと幸せでいてもらいたいと思うと切なくもなります。2021/06/13