内容説明
▼『井筒俊彦英文著作翻訳コレクション』、堂々完結!
▼「井筒東洋哲学」の原点をなす、壮大な試み。
▼日本語著作の空白の時代を埋める最重要著作。
下巻は、老子と荘子の存在論、イスラーム神秘哲学との比較哲学的考察。
井筒意味論の展開を解明する訳者解説つき。
目次
第二部 老子と荘子
第一章 老子と荘子
第二章 神話創作から形而上学へ
第三章 夢と現実
第四章 あれとこれを超えて
第五章 新たな自我の誕生
第六章 本質主義に抗して
第七章 道
第八章 衆妙の門
第九章 決定論と自由
第十章 価値の完全な逆転
第十一章 完全人間
第十二章 政治的人間
第三部 結 論――比較考量
第一章 方法論的予備考察
第二章 人間の内部変容
第三章 実の在り方の多層構造
第四章 本質と存在
第五章 存在の自己展開
訳 注
解説 仁子寿晴
訳者あとがき
『道徳経』『荘子』引用索引
人名・著作名索引
事項索引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
8
著者にとって老荘思想は形而上学であり、その宇宙は「混沌」と呼ばれる。この宇宙を「無名」や「道」と老子が呼ぶ時、有無の次元を超越した不可視の宇宙こそ真の実在と考えるからだ。老荘思想の宇宙観をスーフィズムの「存在一性論」と比較対照する本巻では、老子の「一なる者」を、イブン・アラビーの絶対的「一者」と多を内包する「一者」の両者を含む概念と捉える。著者は、老荘思想とスーフィズムに、「一者」なる存在の顕れとして宇宙を論ずる形而上学の共通性を見出しつつ、東洋哲学の特徴とされる複数の起源間のネットワークを構想していく。2021/02/06
bapaksejahtera
4
イスラムはヘレニズム的存在論を発掘継承し以て神学を構成した。スーフィズムにその例がある。続いてキリスト教はトマスによりイスラムを原理に中世これを切り抜け、その後近代哲学を構築した。ユダヤ教を含む以上にはギリシア由来の共通の語彙がある。他方異文化体系をであるシナには儒教を初めとして抜き難い本質論的存在論が目立つ。著者はその中で老荘思想を取り上げスーフィズムと対比しつつその存在論的類似構造を把握しようとする。それは究極本質への到達に相似するfana消滅と坐忘の二概念のみならず、それに至る階梯にも迫るものである2020/03/22