クルアーンにおける神と人間 - クルアーンの世界観の意味論

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クルアーンにおける神と人間 - クルアーンの世界観の意味論

  • ISBN:9784766424164

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内容説明

▼井筒俊彦英文著作翻訳コレクション第二弾God and Man in the Koran (1964)の日本語訳。

▼クルアーンに示される世界の中心をなす「創造主である神」と「被造物たる人間」との関係を、意味論的に分析するという世界的にも画期的な名著を最新研究をふまえ翻訳。
 井筒はまず冒頭の二章を割いて、意味論的方法とは何か、それをいかにクルアーン分析に有効かを説明し、さらに「主としての神」、「奴隷としての人間」というセム的な神人関係を土台とするクルアーン的世界観の基礎構造を概説する。
 つづいて、クルアーンの中心的存在である神について、アッラーという神名とその意味領域について論じるため、前イスラーム(pre-Islamic)のジャーヒリーヤ期と呼ばれる「無道時代」のアッラーの在り方、それがユダヤ教徒やキリスト教徒との接触を通じて変容してゆく様を叙述する。 

 井筒の著作を特徴づける、確固たる意味論的方法およびクルアーンをクルアーンに内在する世界観で理解しようとするオリジナルなテクスト読みは、クルアーンをより詳しく理解しようとする読者のみならず、井筒読者も満足させる内容。多引されるジャーヒリーヤ詩は本書でしか出会えない逸品の作品でもある。

目次



第一章 意味論とクルアーン
 一 クルアーンの意味論
 二 個別概念の統合
 三 「基本的」意味と「連関的」意味
 四 語彙と世界観(Weltanschauung)

第二章 歴史のなかに配置されたクルアーンのキー・ターム
 一 通時的意味論と共時的意味論
 二 クルアーンと後ポストクルアーン諸体系

第三章 クルアーンの世界観の基本構造
 一 予備考察
 二 神と人間
 三 ムスリム共同体
 四 不可視なものと可視なるもの
 五 現世と来世
 六 終末論的概念群

第四章 アッラー
 一 アッラーという語の「基本的」意味と「連関的」意味
 二 アラビア半島の異教におけるアッラーの概念
 三 ユダヤ教徒とキリスト教徒
 四 異教のアラブ人たちが手にしたユダヤ・キリスト教のアッラーの概念
 五 ハニーフたちのアッラー

第五章 神と人間の存在論的連関
 一 創造の概念
 二 人間の運命

第六章 神と人間のコミュニケーション的連関(I)
――非言語的コミュニケーション
 一 神の「徴/記号」
 二 神的導き
 三 コミュニケーションの手段としての崇敬

第七章  神と人間のコミュニケーション的連関(II)
――言語的コミュニケーション
 一 神の語り(kal m All h)
 二 ワユフという語の原義
 三 啓示の意味論的構造
 四 アラビア語における啓示
 五 祈り(ドゥアー、Du‘ ’)

第八章 ジャーヒリーヤとイスラーム
 一 イスラームと、卑ひくく在って己れを委ねることの概念
 二 ヒルムからイスラームへ
 三 「服従」としての宗教(ディーン、d n)の概念

第九章 神と人間の倫理的連関
 一 慈しみの神
 二 怒りの神
 三 ワアドとワイード


 解 説
 監訳者あとがき
 参考文献
 索引……事項索引/アラビア語用語索引(和訳つき)
       人名・著者名索引/クルアーン引用索引/原語索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

roughfractus02

7
クルアーン自身に語らせる場合、ムハマンドが生きた時代の語(アッラー、イスラーム、ムスリム等)の語用の相関を調べ、当時の状況と意味を想定する手順を要する。著者は通時的意味論を用いてクルアーン後の語用を排してクルアーン前のベドウィン時代の語用と対照し、共時的意味論によってクルアーンにおいて旧来の語用が二項対立的に編成し直される様を構造化する。本書後半は特に「神と人間」の二項をに注目し、無知の反対語ヒルムが後退する一方、啓示と祈りの絶対的区別が強調され、神の慈悲と怒りが人の信仰の有無の二項に関わる点が示される。2021/01/31

bapaksejahtera

6
イスラム基幹概念について開教前後の意味的変容を包括的に論ずる。内容は個別アラビア語変化を追うだけでなく諸観念に纏わる意味的変容を通じた世界観の動的解明である。本書は英文著作の翻訳だが、同内容は「イスラーム生誕」で文庫出版されている。さて本書の主論ではないが、神が天使ジブリールを通じアラビヤ語を以てムハンマドに下したクルアーンは、神の「ラング」であり、アラビア語はその際パロールの用に適った訳で、決して神聖言語ではない、と井筒は記す。非アラブのイランにおいて、非アラブのイスラム理解に通じた著者らしい記述である2020/10/17

人生ゴルディアス

4
イスラムについて全く知らないので読んでみた。著者がコーランの日本語注釈(如何なる者もコーランの翻訳はできない)を書いたのを知ってたので、手に取ってみる。どうやら本書では、コーランに出てくる言葉のうち、ジャーヒリーヤ期とそれ以降での言葉の変化のようなものを記そうとしているのだが、これはどう見ても語用論であって、意味論ではない。冒頭のほうでは言語哲学的な意味論を匂わせる説明があったので、言語がいかようにして「意味」を持ちうるのかの意味で「アッラー」とかを扱うかと思ったのだけど、そうではなかった。2017/08/24

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