内容説明
世界における「南」と「北」の女性たちの間の断絶は限りなく深い。しかし、国際社会における「南」と「北」は今日ますます密接に結びついていることを考えれば、「女であること」の社会的位置の「構造的共通性」もやはり無視できないものがある。 本書では、あえて性別という要因を焦点化し、セクシュアリティ、「南」の女性、フェミニズムの知の伝達、教員文化、19世紀アメリカ少女小説などの題材から、近現代の権力および支配・ヘゲモニー現象を「ジェンダー・ポリティクス」として分析を試み、同時にその変容の契機および方向性を模索した。
目次
はしがき
ジェンダー秩序による〈セクシュアリティ〉編成とフェミニズム言説――その限界と可能性の分岐点[笠間千浪]
はじめに
一 フェミニズムと「セクシュアリティ」領域
二 フェミニズム言説のなかのセクシュアリティ論議――ジェンダー秩序との関連から
三 フェミニズムにとっての「セクシュアリティ」主題化の方向性の模索――ジェンダー秩序へ回収されないために
むすびに――セクシュアリティ編成の民主化への触媒としての〈再帰性〉
フェミニズム教育学の形成と展開[入江直子]
はじめに
一 フェミニズム教育学の形成――二つのモデルとその統合
二 フェミニズム教育学の展開
教員像のオルタナティブを探る――イギリスの女性教員研究[河上婦志子]
はじめに
一 女性教員批判への反論
二 職歴のオルタナティブ
三 管理運営方法のオルタナティブ
おわりに
『若草物語』の仮面の陰で――一九世紀アメリカ女性小説とルイザ・メイ・オルコット[山口ヨシ子]
一 アメリカ文学は「男だけの世界」か
二 職業作家としてのオルコット
三 女子教育と家庭小説
四 オルコットの父権的権威への挑戦
五 男性批評家の伝統とオルコット
ネオリベラリズム時代の女性たち――ラテンアメリカのケース[後藤政子]
はじめに
一 ネオリベラリズム時代は軍事支配とともに
二 ネオリベラリズム時代は女性に何をもたらしたか
グローバル化と華南の女性[沢田ゆかり]
はじめに――問題の所在
一 中国の対外開放と出稼ぎ女工
二 「華南経済圏」による香港の産業空洞化と女性労働者
おわりに



