角川文庫<br> 不在

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角川文庫
不在

  • 著者名:彩瀬まる【著者】
  • 価格 ¥726(本体¥660)
  • KADOKAWA(2021/04発売)
  • ポイント 6pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784041112298

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内容説明

長らく疎遠だった父が、死んだ。
遺言状には「明日香を除く親族は屋敷に立ち入らないこと」という不可解な言葉。
娘の明日香は戸惑いを覚えたが、医師であった父が最期まで守っていた洋館を、兄に代わり受け継ぐことを決める。
25年ぶりに足を踏み入れた生家には、自分の知らない父の痕跡がそこかしこに残っていた。
年下の恋人・冬馬と共に家財道具の処分を始めた明日香だったが、整理が進むにつれ、漫画家の仕事がぎくしゃくし始め、さらに俳優である冬馬との間にもすれ違いが生じるようになる。
次々に現れる奇妙な遺物に翻弄される明日香の目の前に、父と自分の娘と暮らしていたという女・妃美子が現れて……。

「家族」「男女」――安心できるけれど窮屈な、名付けられた関係性の中で、人はどう生きるのか。
家族をうしない、恋人をうしない、依るべきものをなくした世界で、人はどう生きるのか。
いま、最も注目されている作家・彩瀬まるが、愛による呪縛と、愛に囚われない生き方とを探る、野心的長篇小説。

解説:村山由佳

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ベイマックス

97
ふ~ん、正直感想の言葉に困る作品だな。なんだろう…、わざわざ生き方を苦しくしている感じがする。素直になれなくてすれ違うとかのレベルではなく、難しく考え過ぎている。作者も作家という芸術家で、主人公も漫画家で、どこか凡人ではなく狂気でないと存在し得ない職種なのか。2021/10/17

mayu

82
苦しいのに引き込まれる。立派な家で居心地の悪さを感じる中、父だけとは分かりあえたつもりだった、愛されたいのに選ばれなかった。明日香はそんな思いに傷つく。私も無償の愛とか真っ直ぐな愛とか、そういうものに憧れる。「愛という言葉が使われるのは、基本的にそうじゃないものをそう見せようとする時だけ」この智の台詞にはっとする。私が愛と信じていたものは思い通りにしたいだけのエゴだったのではないか。枯れたとしても花が咲いていたことは否定しない。かつて誰かとの間に感じた想いを確かにあったと認められたら、前を向ける気がした。2022/08/30

だまだまこ

55
父の死をきっかけに、立派すぎる洋館を相続した漫画家の明日香。劇団員の彼と一緒に片付けを始める中で、自分の思い出と向き合っていく物語。子供の頃に親から「選ばれなかった」という記憶は深く根付いていて、それが変貌して彼への愛の依存や暴力になってしまう過程が悲しく切ない。稼いで彼を養っているという自負がまた、愛されて当然という傲慢さを生み出していることにお金という権力の物悲しさを感じた。「辛いことを生き延びた先」の景色が少しでも明るいものでありますように。2021/05/12

坂城 弥生

49
明日香の恋人への感情が変化していくのが生々しくてちょっと怖かった2021/08/03

dr2006

46
予定調和ではないドン底の結末は上向きの明日を担う。彩瀬さんの作品は、時間の経過とともに正のエネルギーが逓減していく心情表現が秀逸だ。主人公の明日香は売れっ子の漫画家だ。母との離婚で何十年も離れれて住んでいた父が亡くなり、遺言により父が所有していた大きな洋館を相続することになった。洋館に思い入れがない明日香は、売却するため恋人と共に遺品整理をすることになったが、作業を進める中で自尊心が瓦解する。それを養っている年下の俳優業の恋人との関係のせいにする。明日香は洋館に通うことで自己を傍観し「不在」に気づく。2023/10/09

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