岩波新書<br> 風土と歴史

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岩波新書
風土と歴史

  • 著者名:飯沼二郎
  • 価格 ¥880(本体¥800)
  • 岩波書店(2021/04発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004130192

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内容説明

人間の歴史にとって風土の果す役割は大きい.風土が人間によって容易に変えられぬ枠であるにせよ,それをどう利用するかは人間の側の主体的条件にかかわる.人間は風土とどのようにかかわりつつ今日に及んだのか.農業技術の変遷と生産関係の発展段階をたどりながら,世界史の背景に新たな光をあてようと試みるユニークな文明史論.

目次

〈1 バクダードでかんがえたこと 動態的風土論〉┴今日のバクダード/むかしのバクダード/「南北」問題についての対話/動態的風土論┴〈2 風土とはなにか 農業技術からみる〉┴1 農業のはじまり┴地上最後の楽園/人類最初の農業/鍬農耕文化/半栽培とは/作物のはじまり/家畜のはじまり/犁農耕文化へ/鍬農耕と犁農耕の地域/農耕文化複合の諸要素/道具の柄のつけ方/農耕文化の第一次中心地/農耕文化の第二次中心地/犁農耕の七つの流れ/北ヨーロッパにたっした流れ/北ヨーロッパの貢献┴2 乾燥地帯と湿潤地帯┴鍬農耕のはじまり/犁の二つの種類/乾燥地と湿潤地の区別/冬雨・乾燥地帯の農業/夏雨・乾燥地帯の農業/湿潤地帯の農業/雑草の種類/氷河の影響/密植による除草/休閑農業と中耕農業┴3 休閑農業のながれ┴テヘランの街と郊外/エルブルズの山麓/西南アジアの乾地農業/乾地農業はギャンブル/西南アジアの山麓の灌漑農業/西南アジアの平野の灌漑農業/都市近郊の灌漑農業/ダマスカスの近郊にて/古代メソポタミアの農業暦/古代メソポタミアの犁・作物・家畜/古代エジプトの農業/ベイスン法/インダス古代文明/ギリシャ・ローマの農業/北ヨーロッパ中世の農業/三圃式への移行┴4 中耕農業のながれ┴『リグヴェーダ』の農業/その他のヴェーダ文献の農業/げんざいのパンジャブの乾地農業/古代華北の乾地農業/げんざいの華北の農業/夏雨地帯の乾地農業の特徴/紅頭嶼の農業/イナ作の起源/古代中国のイナ作/火耕水耨/イネの常湛法/『クリシ・パラーシャラ』のイナ作/『斉民要術』のイナ作/イネの中干法/イナ作の日本への伝播/日本古代の鉄製農具/イナ作と犁の分離┴〈3 歴史のなかのワク 農耕社会の発展〉┴1 アジア的生産様式┴ふしぎな蟻の巣・カナート/カナートの開鑿/ターレババード村/ボネ組み農民/イランの寄生地主/マルクスの世界史/『資本制生産に先行する諸形態』/本源的所有と二次的所有/アジア的生産様式/シュメールの都市国家/シュメールの統一王朝/古代オリエントの国家構造┴2 古典古代の世界┴ヤスパースの「枢軸時代」/古代パレスチナの農業と宗教/ギリシャの都市国家/古典古代的共同体/ギリシャの奴隷制/アテネの民主制/ローマの奴隷制/古代中国の都市国家/枢軸時代の終焉と大帝国の成立┴3 封建社会の成立┴カール大帝の戴冠/中央集権国家と乾燥地帯/西欧の農奴制/西欧の村落共同体/中世農業革命/西欧の封土制/西欧における封建制の成立/日本の律令制と封建制/律令制のアウト・ロー/日本における封建制の成立/室町・江戸期の村┴4 世界資本主義┴英仏専制政治の比較/資本主義の成立/資本主義と風土/世界資本主義とインド/東インド会社の綿織物独占/インド国民経済の変換/インドの鉄道・寄生地主/古いインドの街にて/モノカルチュアからの脱出/従属経済からの脱出/カルカッタの日本農場/カルカッタ近郊の一日/インドの「近代化」を阻むもの/あらたなる従属┴〈4 内村鑑三のいみするもの 近代主義と民族主義〉┴内村鑑三の信仰/内村の二つのJ/「西欧」的なるもの/西欧のルネッサンス/「日本」的なるもの/無床犁の普及/短床犁の発明/短床犁の評価/真に風土を生かす道/庶民の限界┴あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

スズツキ

3
タイトルからもっと概説的なものを連想したが、アジアを中心とした農耕論の本だった。同じ青版から名著として有名な『栽培植物と農耕の起源』が出ているが、それと併読するとなおよろしい。2016/02/17

MIRACLE

0
人間の歴史への風土(=自然環境)の影響について、農業のあり方とその違いから、検証した本。問題意識、農業技術の発展、それに伴う政治・経済の変容、日本農業の方向性の順に、論じている。表題は、「風土と歴史」である。しかし、実際に扱っているは、農業の歴史である。筆者は、ヴェルトの農業一元論を、支持している。しかし、筆者も本書で指摘しているように、人間の存在は、植生のあり方に影響をあたえる。それにより、複数の場所で、栽培植物が出現することは、起こりうることだ。よって、多元説の方が、仮説としては、妥当のように思う。2014/03/16

まりも

0
世界各地の気候と、その風土から発展した農業形態と政治機構の関連を俯瞰していく。乾燥地帯のため農業に灌漑設備が必要で、それゆえに中央集権が強いところでは資本主義が発達しにくい、など。なるほどなあ、と思った。日本の風土に合った短床犂を発明した農民を冷笑した明治時代の学者をぐっさりとやってる。学者の机上の空論的農業書はあてにならないと言っている。著者がどれほど土に触っているのかは書かれていない。2024/04/04

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