内容説明
人間の歴史にとって風土の果す役割は大きい.風土が人間によって容易に変えられぬ枠であるにせよ,それをどう利用するかは人間の側の主体的条件にかかわる.人間は風土とどのようにかかわりつつ今日に及んだのか.農業技術の変遷と生産関係の発展段階をたどりながら,世界史の背景に新たな光をあてようと試みるユニークな文明史論.
目次
〈1 バクダードでかんがえたこと 動態的風土論〉┴今日のバクダード/むかしのバクダード/「南北」問題についての対話/動態的風土論┴〈2 風土とはなにか 農業技術からみる〉┴1 農業のはじまり┴地上最後の楽園/人類最初の農業/鍬農耕文化/半栽培とは/作物のはじまり/家畜のはじまり/犁農耕文化へ/鍬農耕と犁農耕の地域/農耕文化複合の諸要素/道具の柄のつけ方/農耕文化の第一次中心地/農耕文化の第二次中心地/犁農耕の七つの流れ/北ヨーロッパにたっした流れ/北ヨーロッパの貢献┴2 乾燥地帯と湿潤地帯┴鍬農耕のはじまり/犁の二つの種類/乾燥地と湿潤地の区別/冬雨・乾燥地帯の農業/夏雨・乾燥地帯の農業/湿潤地帯の農業/雑草の種類/氷河の影響/密植による除草/休閑農業と中耕農業┴3 休閑農業のながれ┴テヘランの街と郊外/エルブルズの山麓/西南アジアの乾地農業/乾地農業はギャンブル/西南アジアの山麓の灌漑農業/西南アジアの平野の灌漑農業/都市近郊の灌漑農業/ダマスカスの近郊にて/古代メソポタミアの農業暦/古代メソポタミアの犁・作物・家畜/古代エジプトの農業/ベイスン法/インダス古代文明/ギリシャ・ローマの農業/北ヨーロッパ中世の農業/三圃式への移行┴4 中耕農業のながれ┴『リグヴェーダ』の農業/その他のヴェーダ文献の農業/げんざいのパンジャブの乾地農業/古代華北の乾地農業/げんざいの華北の農業/夏雨地帯の乾地農業の特徴/紅頭嶼の農業/イナ作の起源/古代中国のイナ作/火耕水耨/イネの常湛法/『クリシ・パラーシャラ』のイナ作/『斉民要術』のイナ作/イネの中干法/イナ作の日本への伝播/日本古代の鉄製農具/イナ作と犁の分離┴〈3 歴史のなかのワク 農耕社会の発展〉┴1 アジア的生産様式┴ふしぎな蟻の巣・カナート/カナートの開鑿/ターレババード村/ボネ組み農民/イランの寄生地主/マルクスの世界史/『資本制生産に先行する諸形態』/本源的所有と二次的所有/アジア的生産様式/シュメールの都市国家/シュメールの統一王朝/古代オリエントの国家構造┴2 古典古代の世界┴ヤスパースの「枢軸時代」/古代パレスチナの農業と宗教/ギリシャの都市国家/古典古代的共同体/ギリシャの奴隷制/アテネの民主制/ローマの奴隷制/古代中国の都市国家/枢軸時代の終焉と大帝国の成立┴3 封建社会の成立┴カール大帝の戴冠/中央集権国家と乾燥地帯/西欧の農奴制/西欧の村落共同体/中世農業革命/西欧の封土制/西欧における封建制の成立/日本の律令制と封建制/律令制のアウト・ロー/日本における封建制の成立/室町・江戸期の村┴4 世界資本主義┴英仏専制政治の比較/資本主義の成立/資本主義と風土/世界資本主義とインド/東インド会社の綿織物独占/インド国民経済の変換/インドの鉄道・寄生地主/古いインドの街にて/モノカルチュアからの脱出/従属経済からの脱出/カルカッタの日本農場/カルカッタ近郊の一日/インドの「近代化」を阻むもの/あらたなる従属┴〈4 内村鑑三のいみするもの 近代主義と民族主義〉┴内村鑑三の信仰/内村の二つのJ/「西欧」的なるもの/西欧のルネッサンス/「日本」的なるもの/無床犁の普及/短床犁の発明/短床犁の評価/真に風土を生かす道/庶民の限界┴あとがき
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