内容説明
高エネルギー物理学は今、数理の美しさに欺かれているのだろうか? 理論評価の「美的基準」をめぐる研究者たちの対話を通して探る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
171
数式を使わずに数学を語る。巨大粒子加速器の実験結果は、近年の物理学者の予想を裏切り続けている。学者が信じ続けてきた超対称性は純粋に数学として美しく、物理学に残る様々な散らかった奇妙な定数を様々に結び付け”美しく”まとめ上げてくれる。超対称性は予想からいつしか定説となっていた。しかし超対称性が存在するなら発見されなければならない粒子は、予想されたエネルギー内に一つも見つからない。超対称性の美しさは罠なのか。多宇宙のような宇宙モデルは敗北なのか。研究者としての語りと高名な学者へのインタビュ。2021/09/10
やいっち
77
フランクフルト高等研究所(FIAS、ドイツ)研究フェローである著者が世界の名立たる理論家らにインタビューしての記事。筆者は女性かな。「研究者たち自身の語りを通じて浮かび上がるのは、究極のフロンティアに進撃を続けるイメージとは異なり、空振り続きの実験結果に戸惑い、理論の足場の不確かさと苦闘する物理学の姿」が浮かび上がる。2021/06/13
CCC
9
自然は美しいはずという信念はいつの時代もバイアスになり、良くも悪くも科学の理論構築に影響をもたらしてきた。しかし科学を進歩させた新しい有効な理論は常に美しいものとは限らなかった。だが現在の基礎的な物理学は美しい理論ばかりを追っている。あるいは追わざるを得ない状況になっている。そのために行き詰まっているのではないか。概ねそんな主張だったと思う。個人的には反証可能性は科学の基準としてはとっくに時効だ、と前提的に語っている部分が印象深かった。うすうす感じてはいたけれど、あらためて現実を突きつけられた思いがした。2021/11/22
人生ゴルディアス
8
背筋が伸びる感じの翻訳だった。ポバーの「科学的言明とは反証可能性を持つことである」という意味において宇宙物理学の少なくない部分が科学ではない、と自虐で述べる物理学者の言を見たことがあるが、本書はそれを正面からとらえている。しかし数学がなぜ(たまに)有用なのか、そもそも論理的命題が意味を持つとはどういうことなのかと100年前に大問題になり、論理実証主義運動という汚い花火になった。また著者の苦悩は非常に強く理解できるが、絶望した問いへの答えは絶望でしか納得しないという神学だかの言葉を思い出すべきではとも感じた2021/11/27
鴨長石
4
科学は観測データに基づいて理論を形成していくという営みであるが、現在の理論物理学者は数学的な美しさを重視して理論を作ってからそれに合う観測データを見つけようとしている。具体的には超対称性理論だが、理論が要請する超対称性粒子は膨大な実験が行われたのにも関わらず未発見である。数学的な美しさは恣意的な概念であり、宇宙の真理とは関係がないのではないかというのが著者の意見である。序盤では科学哲学にやや敵対的であるかのような表現があったが、それは現在の物理学がうまくいっていないことの自虐の裏返しであったようだ。2023/06/23
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