内容説明
在日朝鮮人として生れた著者の、37歳で夭逝した魂の記録。差別と偏見の苦しい青春時代を越えて、生国・日本と母国・韓国との狭間に、言葉を通してのアイデンティティを探し求めて、ひたすらに生きた短かい一生の鮮烈な作品群。芥川賞受賞の「由熙」、そして全作品を象徴するかのような処女作「ナビ・タリョン」(嘆きの蝶)、「かずきめ」「あにごぜ」を収録、人生の真実を表現。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
190
第100回(1988年)芥川賞。 韓国の雰囲気 満載の物語である。 下宿生 イユヒとの交流を哀切に描く。 この時代の韓国ソウルの風景が新鮮で 興味深い。在日同胞イユヒが抱える 苦悶がしっとりと読者に伝わる… 日本作家にはない情念のようなものが ひっそりと息づく、不思議な本だった。 2017/12/14
absinthe
169
とても良い本だった。在日女性を主人公にした4編。『由煕』おそらく著者ご本人を主人公にしたような作品。日本も韓国も祖国と思えず定着できない境遇。経済格差に習慣の違い。日本人になれば裏切り者、韓国でもつまはじき。葛藤は根深い。『あにごぜ』『ナビ…』も良かったが、『かずきめ』は著者の思惑通り、嫌ミスのような読後感。良くも悪くも強烈な印象が残った。2021/09/06
kaizen@名古屋de朝活読書会
104
【芥川賞】在日韓国人が、韓国の大学に入り、京城で下宿する。主人公は下宿をはじめたばかりの叔母の姪。女性3人のすれ違いと、韓国と日本の文化、言葉のすれ違い。何が書きたかったかは分からないが、どういう状況がありうるかは分かった。学生が中退したし、大学内の描写がほとんどないので学園物という訳ではなさそう。 2014/02/04
ヴェネツィア
73
1988年下半期芥川賞受賞作。南木佳士「ダイヤモンドダスト」との同時受賞だが、この時には司修や吉本ばなな、大岡玲等もノミネートされていた。さて、当該作の『由煕』だが、手法的には鷗外の『舞姫』のように、全てが終わり、もはやどうしようもなくなったところから語り始められる。すなわち時間と空間を隔てることによって、哀しみもまたロマネスクで甘美なものになるのだ。しかし、民族的故郷である韓国への違和によるアイデンティティの喪失はきわめて深刻だ。この小説を日本語で書かざるを得ないところに作者の苦衷はきわまるだろう。2013/08/12
佐島楓
70
表題作「ナビ・タリョン」(嘆きの蝶)を課題で読む。在日朝鮮人である主人公は、朝鮮人でも日本人でもない自分のアイデンティティや差別に苦しみ、両親の不和や家族の病気にも悩まされ、自傷のごとく酒やたばこをのむようになる。もがきながらも徐々に前向きに生きていこうとする主人公が美しい。性的な描写もあるが、文章が清廉、清潔である。課題に出されなければ読んでいたかどうか怪しいので先生に感謝したいし、ほぼ私と同じ年代で亡くなった著者の全集を入手したい。2017/02/28
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