筑摩選書<br> 盆踊りの戦後史 ――「ふるさと」の喪失と創造

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筑摩選書
盆踊りの戦後史 ――「ふるさと」の喪失と創造

  • 著者名:大石始【著者】
  • 価格 ¥1,595(本体¥1,450)
  • 筑摩書房(2021/04発売)
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  • ISBN:9784480017192

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内容説明

盆踊りは、戦後大きく形を変えてきた。敗戦、高度経済成長、ニュータウンの造成、バブル、東日本大震災、地域の高齢化・過疎化、そしてコロナ禍……。人が集まり、音頭にあわせて踊ることは、楽しいだけでなく、人や地域にとって大切な役割を持っている。そして、その役割も時とともに変化してきた。盆踊りを通して、日本の地域コミュニティの変遷を見つめ、その未来を考える。

目次

はじめに
第一章 日本の近代化と盆踊り──明治~昭和初期
1 明治以前の盆踊り
近代化以前
「秩序装置」として
性のエネルギーを発散する場
盆踊りの禁止
健全化される盆踊り
2 大衆化する盆踊り──「東京音頭」の時代
観光化や公演化による変化
レコード・ラジオの発展
「東京音頭」の大ヒット
「丸の内音頭」の誕生
現代盆踊り文化の源流──日比谷公園の大盆踊り大会
3 昭和戦前期の盆踊り
振り付けと新舞踊運動
踊りコンテスト
プロパガンダとしての音頭・盆踊り
第二章 戦後復興と盆踊りの再生──昭和二〇~三〇年代
1 終戦直後の盆踊り事情
戦没者供養という原点
暗いムードを吹き飛ばす
再編される地縁団体
2 盆踊りの新たな役割
民謡ブームにのって
国内観光ブームの影響
レクリエーション・ダンスとして
3 北海道の独自な盆踊り文化
「ベッチョ踊り」
「子供盆おどり唄」
第三章 高度経済成長期の新たな盆踊り空間──昭和三〇~四〇年代
1 高度経済成長期の到来
故郷喪失者たちが夢見た「ふるさと」
新生活運動による危機
2 日本共産党後援会が立ち上げた盆踊り
神奈川県川崎市川崎区ふるさと大師盆踊り
神奈川県横浜市ふるさと港北秋まつり
3 釜ヶ崎夏祭り
越冬闘争から誕生
「もうひとつのふるさと」
4 工場の盆踊り
福利厚生イヴェントとして
地域で親しまれる工場盆踊り
CSR活動の一環として
5 団地の盆踊り
団地という「新しい街」
団地の住人はどんな人たちか
千葉県柏市光ヶ丘団地
岐阜県瑞穂市本田団地
福岡県北九州市土取団地
東京都東久留米市滝山団地
必要とされた「地域イヴェント」
第四章 団塊ジュニア世代と盆踊り──昭和五〇年代
1 多摩ニュータウンと盆踊り
「ディスカバー・ジャパン」の時代
多摩ニュータウンの盆踊り
旧住民と新住民の融和
確かな「記憶」と「風土」を刻み込むために
2 ニュータウンの新たな可能性
DE DE MOUSEが開いた可能性
千里ニュータウン
コミュニティーの変遷に対応して複合イヴェントへ
変わりゆく祭りの典型──千葉県印西市千葉ニュータウン
3 盆踊りは何でもあり?
団塊ジュニアはアニソン音頭で踊る
新スタンダードは地域で突然現れる
「何でもあり」の功罪
4 「バハマ・ママ」音頭の謎
「バハマ・ママ」音頭
「バハマ・ママ」とレクリエーション・ダンス
盆踊りへの伝播
自由になった盆踊り
第五章 バブル最盛期の盆踊りと衰退──昭和六〇年代~平成初期
1 コミュニティーの破壊と再生
変容する盆踊り
コミュニティーの変容と破壊──西神田ファミリー夏祭り・盆踊り
コミュニティーの再生と盆踊りの再開
変遷が刻まれた「ニシカンダー音頭」
2 「ダンシング・ヒーロー」とYOSAKOI
「ダンシング・ヒーロー」がなぜ盆踊りになったのか
さらに広がる「ダンシング・ヒーロー」
ダンス・パフォーマンスとしての祭り──YOSAKOIソーラン祭り以降
現代のメンタリティーに合致したYOSAKOI
3 バブル崩壊と阪神・淡路大震災
バブル崩壊後に盆踊りに起きたこと──高齢化・不景気・マンネリ化
地縁組織の弱体化
阪神・淡路大震災と盆踊り
第六章 東日本大震災以降の盆踊り文化──平成後期~現在
1 東日本大震災後の新たな動き
東日本大震災以降の盆踊り人気
野外フェス以降の「再発見」
プロジェクトFUKUSHIMA!と「ふるさとの創造」
「DAIBON」──従来の演目のアップデート
にゅ~盆踊り──ダンスカンパニーとの協働
東日本大震災以降見直される「人と地域を結び直す力」
高島おどり・徳山おどり──盆踊り愛好家による支援
鴨台盆踊り──学生が企画・運営
2 インターネットの影響
YouTube以降のカルチャーとしての盆踊り
SNSによる情報拡散
SNSによるコミュニティーのつながり強化
SNSの弊害
3 被災地と盆踊り
一年に一度の再会の場所
芸能という「最後に残る生きる場」
復興公営住宅の盆踊り大会
4 盆踊りと移民
埼玉県川口市芝園団地──移民大国の縮図
「私たちの場所」という帰属意識を育むために──芝園団地ふるさと祭り
神奈川県横浜市・大和市いちょう団地──もうひとつの多国籍団地
いちょう団地祭り──子供たちが「ふるさと意識」を育む
終章 アフター・コロナ時代の盆踊り──二〇二〇年夏に考える
盆踊りのない夏
「オンライン盆踊り」の試み
高輪ゲートウェイ盆踊り
なぜ私たちには盆踊りが必要なのか──さまざまな縁を結び直す場としての意義
死者と生者の交流の場としての意義
アップデートされる盆踊り──愛知県東海市の「無音盆踊り」
各地域の風習・物語を音頭にする試み
あとがき
参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

kenitirokikuti

11
図書館にて。本書を読んだのは、我が居住地の湖北音頭やかっぱ音頭を考えるためであったが、その件については前著である『ニッポン大音頭時代』で済んでしまった。民俗的な盆踊りってはあるんだけど、現行のやつはラジオ放送以降のモダンなやつである。2023/10/22

maqiso

5
盆踊りは明治時代に禁止令が出されたが、健全化・大衆化することで存続した。戦後は民謡や観光のブームにも乗って復活した。高度経済成長期以降、団地やニュータウンという新しい街で住民の一体感を生むために盆踊り大会が使われた。みんなで踊りを作るレクリエーションダンスの思想や、自由度が高く開催が容易なよさこい祭りのスタイルが影響して、盆踊りは曲もダンスも自由になり、ヒット曲が全国で踊られている。バブル崩壊後は衰退したが、震災復興で見直され、移民も含めた「ふるさと」の祭りとなっている地区もある。2022/09/25

蛸墨雄

5
盆踊り史はふるさとの喪失と創造であるとの言葉。様々な縁を結び直す場としての盆踊り、など、地域社会を立て直す切り札として、分踊りの役割はあるのではないかと説かれている。なるほど、わが町水橋もそういう観点で捉え直したいと思った。近年、富山市水橋地区の5小学校と2中学校が、水橋高校の校舎へと統合される。7箇所の校舎、校庭の有効利用ということを考えるヒントを貰ったかも知れない。2021/02/23

町営バス

3
高度経済成長時代、バブル景気。資本主義経済が隅々まで浸透するにつれて都市部への集中、地方の過疎という事象が表面化した結果、唱歌「ふるさと」に唄われた「古き良きふるさと」は神話となって消え去ってしまった。そんな中で伝統と現代音楽が融合した盆踊りを創造することは「ふるさと」を創造することである。個人主義が蔓延してコミュニティの崩壊が叫ばれて久しい現代において、自身の「よりどころ」が創造されることは、他人との関わりの中で生きていくしか無い人々の数少ない癒やしとなる。2021/02/07

n1

2
図書館本だからできる、無興味・無関係の本を読んでみるシリーズ。2024/07/01

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