内容説明
自暴自棄な生活を送る孤独な少年は、柴咲組の組長の命を救ったことからヤクザの世界に足を踏み入れる。だが、組の存続を巡る抗争の中で14年間服役した彼を待ち受けていたのは、変わり果てた組の姿だった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
黒瀬
110
なるほど、これが映像作品があることを前提にした小説の書き方なのか。地の文は非常に淡々とした描写だが劇場で見たシーンが自然と頭に浮かぶので過度に装飾した文章では却って邪魔になるということ。勉強になる。個人的には若頭・中村を筆頭に追加エピソードが描かれていた点が嬉しい。暴対法や暴排条例によって生きづらくなったと言われるヤクザだが、フロント企業や警察を味方につけて時代に対応したヤクザは昔より旨い汁を吸っている。柴咲組のような義理人情を重んじる昔ながらのヤクザには厳しい時代だ。普通に生きることがどれだけ難しいか。2021/07/14
ふたば
3
映画公開の時に見たヤクザと家族。映画館でなにと表現できない感情になったことを覚えている。またノベライズを通して、細かな心情を知ることができ、更に心がえぐられた。今までした来たことの報復なのか、真っ当に生きてはいけないのか、答えの出ない問題であると思った。そして、山本という存在が悲しく寂しく愛おしく。涙が止まらない物語。2021/07/17
shun
3
2021年20冊目。映画化作品の小説版。ヤクザもの。家族の絆的なものがテーマなんだろうけど、正直うーん…って感じです。結局その世界に一度でも足を踏み入れたら、後戻りできないということ。山本が孤独過ぎて読んでいて辛くなりました。ヤクザもので言えば、個人的には『孤狼の血』の方が読み応えがありました。2021/03/27
すーさん
2
法律条例によって生きていく術をなくしたヤクザの生きざまを描いた作品。すごく良かった⤴😊 映画も観なきゃ☺️2022/07/17
ぼのぼの
2
本を読んで久しぶりに泣いた。元組員が社会復帰を図ろうにも、いわゆる元暴5年条項の壁や、SNSによる過去の暴露等により、愛する家族さえも守れず、自分ではどうすることもできない現実に直面するつらさが鮮明に描かれていた。現代でも、“ヤクザは排除して終わり”という風潮が強いが、社会の受け皿なき排除は、一般人となった元組員を必要以上に苦しめるだけでなく、家族とともに毎日を楽しく過ごすというささやかな幸せさえも認めないものであり、「元組員」が人間的幸せをつかむことを一切認めない社会のあり方は再考されるべきである。2022/01/09