内容説明
1984年、世界は〈オセアニア〉〈ユーラシア〉〈イースタシア〉という3つの国に分割統治されていた。オセアニアは、ビッグ・ブラザー率いる一党独裁制。市中に「ビッグ・ブラザーはあなたを見ている」と書かれたポスターが張られ、国民はテレスクリーンと呼ばれる装置で24時間監視されていた。党員のウィンストン・スミスは、この絶対的統治に疑念を抱き、体制の転覆をもくろむ〈ブラザー同盟〉に興味を持ちはじめていた。一方、美しい党員ジュリアと親密になり、隠れ家でひそかに逢瀬を重ねるようになる。つかの間、自由と生きる喜びを噛みしめるふたり。しかし、そこには、冷酷で絶望的な罠がしかけられていたのだった――。
全体主義が支配する近未来社会の恐怖を描いた本作品が、1949年に発表されるや、当時の東西冷戦が進む世界情勢を反映し、西側諸国で爆発的な支持を得た。1998年「英語で書かれた20世紀の小説ベスト100」に、2002年には「史上最高の文学100」に選出され、その後も、思想・芸術など数多くの分野で多大な影響を与えつづけている。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アナーキー靴下
90
3年前に早川版を読んで以降、音楽に心震わせられる時、いつもこの話を思い出すようになり、いつか再読をと思っていた。言葉と共に概念が消え去るなら気付きさえしない、しかし音楽から受ける情動が繋がる概念が失われているのだとしたら? トランペットの高揚感の繋がり先が一つしか残されていないとしたら? また、以前は支配と洗脳という重苦しい話に思えた全体像が、まるで人間性の円環に閉じ込められたような、痛切だが美しい物語であるように思えた。社会というものは、自分自身を引き延ばし、増幅させたものにしかなり得ないのではないか。2021/07/03
夜長月🌙新潮部
86
反共、全体主義批判よりも現代につながる監視社会批判に恐さを感じました。1984年、このディストピアは常に監視されています。そして我々も。スマホ、パッドを通じて私たちの情報は漏れています。それをもう手離すことはできません。個人としてこの現在の世界にあなたはどう対応しますか。いつまでも警鐘を鳴らし続け、考えさせられる作品でした。語り継がれるべき名作です。2022/10/31
キク
68
名作といわれるし1Q84の元ネタでもあるので、気になってはいた。で、最近誘って頂いた読書会の対象本が「1984年」だった。初めての1984年と読書会をまとめて経験してみようと読んでみた。ド嬢神林が愛する黒表紙の早川epi 版ではなく、去年出た角川の新訳。今までが全て「1984年」だったのに対して、タイトルから年がなくなり「1984」になっている。1Q84との関連性は伝わりやすいけど、本家が寄せていってどうする。鋭い社会洞察で、時の経過で風化してないどころか、むしろ今の方が新しくなってる稀有な名作だった。2022/10/09
みねね
60
これはヤバい。ヤバすぎてヤバい。マジで全体主義エグすぎて引くわ。人権どころか個人って概念ないのキツすぎん? ウィンストンがガラスの文鎮に尊さ感じてるシーンがエモさマシマシだったせいか、ぶっ壊されるのが辛くて病んだ。ゆとり世代してきた割には社会激しすぎてしんどみの毎日だけど、もっとみんなでエモさ大事にしないと近い将来1984みたいな世界になりそう。予言の書すぎて草。/ 現代語、まさしくニュースピーク。2023/09/23
スター
48
昔早川文庫で読み、今回角川文庫新訳で再読したが、やはり面白かった。1949年刊行で、その時点では未来の1984年の英国が舞台。 世界は3分割され、英国は独裁国家オセアニアに組みこまれている。主人公のスミスはオセアニアを支配する党の党員だ。 スミスはプロパガンダを流しながら、党員の日常生活をカメラで監視する装置に怯える人生に疑問を持つようになるが……。 スミスをはじめスミスの同僚、隣人達等、登場人物の人間性が生き生きと描かれ、作品世界を堪能。優れたSFは、人間がよく描かれているものと再認識。2022/09/21