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内容説明
植民地時代のインド。英国人孤児のキムは現地民に溶け込み逞しく暮らしていたが、チベットから聖なる川を探しに来たという老僧に感化され、弟子として同道する。だが現地語と変装が得意な彼は英国軍の目にとまり、やがて重大な任務を担うことになる……。ノーベル賞作家の代表長篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たま
56
『イギリス人の患者』に言及があり読んでみたら面白かった。1901年発表だが作者自身がピカレスクと呼ぶ18世紀的作りの小説で孤児のキムがインドを舞台とする英露諜報戦で活躍する。現在のエンタメ作家ならこの諜報戦をもっと立体的に書くだろうがここではあくまで地べたを這うキム目線、原文がとても難しそうだがその結果訳文はかなり混乱の印象。それでもキムと老僧の師弟愛や二人を助ける毒舌貴婦人、マーブブ、神父、諜報員たちに愛着を覚えて完読。多くの宗教多くの人種の行きかうインドの街道をキムと一緒に旅した気分で楽しかった。2024/06/02
Shun
31
イギリス初のノーベル文学賞受賞作家。初めて読むにあたり新訳は読み易くて有難い。主人公キムは植民地時代のインドで孤児として生きる英国人。チベットから聖なる川を探しにやって来た老僧と出会い感化され、弟子として旅に伴います。英語は片言のキムだが現地に溶け込む資質を見出され、英国軍や敵国との諜報戦(グレート・ゲーム)に大きく関係する立場となる。この時代におけるインド社会や歴史、また列強国の利権などが絡み合う重厚な物語はスパイ小説として、また車輪や曼荼羅から呪術まで多岐にわたる要素がこの小説の魅力を深めています。2020/12/19
星落秋風五丈原
23
【ガーディアン必読1000冊】 アジアの香辛料貿易を目的に設立されたイギリスの勅許会社「イギリス東インド会社」は、次第にインドに行政組織を構築し、徴税や通貨発行を行い、法律を作成して施行し、軍隊を保有して反乱鎮圧や他国との戦争を行う、インドの植民地統治機関へと変貌していった。そしてセポイの反乱後、統治権をイギリスに譲り、1877年ヴィクトリアを皇帝として推戴するイギリス領インド帝国が成立した。聖なる河を求める老僧についていくイギリス人少年キムの冒険譚。2022/10/08
花乃雪音
19
19世紀イギリスの植民地時代のインドで現地の習俗や言語を身に着けたイギリス人の少年キムは老僧と出会い共に旅に出る。訳者まえがきに本書は「冒険譚」「教養小説」「相棒もの」「ロードノベル」「宗教小説」「スパイ小説」とちての一面を持つと書かれている。確かにその通りで否定はできないのだが要素を盛り込みすぎてそういう一面もあるに過ぎないように思える。全編を通すとキムの成長を描いた「教養小説」となる。しかし、私には老僧が主人公でキムは彼を結果的に導く者となるために成長したように思えた。2024/02/12
北風
14
植民地時代のインド、英国人孤児のサクセスストーリー。最初は出会った老僧が面白くて着いていくだけだったのに、いつの間にか互いになくてはならない存在になっていく。祖父と孫のような。しかし、キムはその才覚からスパイとして老僧を隠れ蓑に暗躍する。最初は腕白なキムも成長して老僧を師匠と崇め、仕事と両立させる。あんな悪ガキがこんな風に成長するなんて。老僧が口癖のように言う「車輪」廻る車輪から転げ落ちずに駆けねばならず、いつか飛びたち解脱するわけか。老僧は川を見つけて先へ進む。キムは? 彼はどんな道へ進んだのだろう?2021/05/30